2017-11

「Doll」③

こんにちは(或いはこんばんは)!
奥貫阿Qです。

隔週連載にして、早三話目…でしょうか。
気持ち的にも余裕が生まれ、ESとかがスムーズに進んでいく…と思ったのに、時間ができたらできたで、やることや問題って出てくるんですよねぇ。
何でだ。
就活生&卒論出す学年ってんだから、それのみのイベントだけ起こればいいものを…。

就活、卒論、または何か訳の分からん雑務が噴出し、また怖い話のネタができそうな、今日この頃です(哀)

さて。話題は変わりまして、今日は「Doll」の第三話目です!
謎の女の子について、ほんの少~しだけ、内面描写を入れてみました。
加えて、自警団ズの様子も書きますよ~。久々に、自警団員四人がキリちゃんちにいます。

それでは、本編へどうぞ!
今回も短めですが(汗)



「Doll」③
(by???)

「…何だったんだろ。さっきの…」

あの人間だかカエルだか分からない声。
あれを聞いた途端、何だか怖くなって、「自警団」と呼ばれた場所を逃げ出した。
もう十分に「自警団」から離れられた、と思うまで、私は一体どれくらい走ったんだろう。足がおかしくなるんじゃないかと思うくらい、長い時間を走っていた気がする。…もっとも、もういくら走っても、私の足はおかしくならないし、たとえおかしくなっても、何も困ることなんてないのだけれど。
あ、そういえば。

「…あの男の子は、変わってたな」

男の人二人に追いかけられてた時のことだ。
捕まっても困ることなんてないのに、咄嗟に助けを求めてしまった、あの子。
私を、「自警団」まで連れて行った子。名前は…シンタ君、だっけ。
ちょっと不良っぽかったけど、中身はとっても優しい子だった。
私の目が変だってことにも気が付いたのに、ちっとも臆さなかった。
…あの子には、また会いたいな。きっと、会えないけど、もし会えたら。

「ミラ」
「…」

…訂正。やっぱり、もう会えないんだ。

「探したよ。駄目じゃないか。目立つ服で、森の中をうろついたら…」
「…」

そうは言っても、その「目立つ服」しか、私は持っていない。
私の好みの問題じゃなく、買ってくるこの人の感性から、そうなってしまうんだ。

「いつの間にか、こんな街中まで来ちゃっているし…。帰ろう。今日は派手に動き回ったんだな。腕のカバーがずれかけているじゃないか。カバーが外れたら、みんな驚いてしまう」
「…」

私は、無意識に肘の辺りを押えた。
こいつめ。いっそのこと、カバーなんていらない体にすればよかったんだ。
前に論文で見せてくれた、Mark.I…なんちゃらっていうロボット…ロボット?とにかく、その存在みたいに。
Mark.Iなんて、人間の「コピー」だから。ちょっと体にひびが入っても、自然に直っちゃうんだから。
…ううん。きっと、ひびだって無縁なんだ。人間の「コピー」だもの。
怪我をすれば血が流れ、無理をすれば死に至る…。ほぼほぼ、人間のような存在だったと聞いている。
私が大切で、もう一度完璧な姿の私に会おうとして…それを完全に再現できなかったくせに、この男は。
中途半端な私を見た途端、私の姿にショックを受けて、科学者として駄目になりかけている。
いや、科学者としてだけじゃない。…この人は、

「ミラ?」
「…ん」

駄目だ。今日、久々にいろいろあったせいで、ぼうっとし過ぎていたみたい。
でも、いくらぼうっとしてしまっても、Mark.Iをひがむだなんて、私らしくない。
私まで、気を病んでしまっては、駄目だ。この人の傍で、この人を救えるのは、もう私だけなのだから。

「…○○」
「うん?」

私は気分を変えるべく、彼に向き直った。

「走ってる最中、右のひざ当てをなくしちゃったみたい。…早く、帰ろ」
「それ、本当!?…ああ、本当だ!気が付かなくってごめん!」

何の躊躇いもなく、私の足元まで屈んだこの人は、いつもみたいに大袈裟な声で言う。
恥ずかしい。道の向こう側で、親子がびっくりしたような顔をして、こっちを見てる。

「よし、早く帰ろう。ミラは森にもあるポイントを使えば、あっという間に家につく」
「うん…。いいよね、先の時代の技術は。時間をかけず、あっという間に移動できるんだもん」
「ああ。でも、欲を言えばなぁ…」

のろのろと立ち上がりながら、この人は苦笑した。
唇だけ曲げ、目は決して動かさない、独特な笑い方で。

「移動のたびにミラの体が傷むから、もう少し、ミラの体を頑丈にできればいいよね。…ああ、Mark.I-025-the Moonking。あれの姉妹版が発見できればなぁ。あの体さえ手に入れば、ミラの役に立つのに」


(byアヤト)

「…」
「…」
「…」
「…ふっ、」

MK郡のはずれの、ド貧乏な自警団の事務所(プレハブ製)。
酒と涙と男と女と変態がギュウ詰めになったこの空間は、「ふっ」以外の音がない。
まだまだ太陽が高いのに、無音の空間と化していた。

「ふ、ふ…。誰か、質問したきゃ質問しなよ。ねえアヤト」
「それはこちらのセリフです。こちらを凝視したまま、引きつった笑みを浮かべないでください。キリさん」

…全く。一体どうしてこうも、気まずい空間ができあがってしまったのだろうか。
一応、情報整理をしなければ。節分の時にやった方法で、僕が知る限りのことをまとめてみようか。

① 僕らが帰る前、「裸王」という人(露出狂)をキリさんが捕える。そこに偶然、べろんべろんに酔ったアイさんがやってきた。
② アイさんが、裸王さんの事情聴取を始める。しかし、酔っ払っているため中々聴取進まず。裸王さんの態度は、常に穏やか。どんな質問・指示にも応じたのだという。唯一応じなかった指示は「パンツを穿け」のみ。
③ 自警団事務所に、用事を抱えたシンタ君登場。しかし、キリさんが追い返す。
④ 僕帰還。ミカと共に自警団事務所に顔を出すが、「敷居をまたぐんじゃねえ!」とキリさんに怒鳴られる。もちろん勘当ではなく、理由は、服のあちこちに泥やオナモミや訳の分かんない草が付着していたため。キリさん、無言で風呂屋がある方を指差す。
⑤ 家人として話を聞くため、僕、まっさきに風呂屋から帰る。自警団事務所に入った途端、壁や机に書類が散乱。加えてたんこぶやら足跡をあちこちに付けたまま、床の上で寝入っているアイさんと、簡易牢屋でパンツ(多分僕のだ)を履いてべそをかく裸王さんと、燃え尽きて真っ白になったキリさんを発見。
⑥ 現在。

以上だ。露出狂はともかく、⑤の内容が異常だ。
これについては、まだ詳しく話を聞いていないため、様子が全く分からない。

「聞きにくいですがね…。⑤の内容について、詳しく教えていただけませんか?」
「何さ、⑤って…。もしかして、君が風呂屋に行ってる間のこと?」
「ええ」
「んー、まあ、ちょっと…」
「何だよ。言いにくいのか?」
「言いにくいっつうか、めんどくさいっつうか…あれ?」

いつの間にか、僕の声じゃないアルトボイスが、会話に割り込んできていた。
驚いて、声がした方を見ると。

「…ミーナ。あんた何で私の服着てんの」
「ドロドロになった服って、気持ち悪くて」
「自分のが置いてあるじゃん。うちの押し入れの中に…」
「おしゃれ着って、風呂上りに着たくないし」
「だからって、何で断りもなく私の服を!?そもそもサイズ違うじゃん!」

…そうなのだ。ミカは今、キリさんの服を着て、そこに突っ立っていたのだ。
確かに彼女は、風呂場に行く際、何故かキリさんの服を小脇に抱えていた。僕がそれを質問したら、「大丈夫大丈夫。借りるだけだから」って言ったから、てっきり許可を得ていると思っていたのだが。
どうやらこれは、無断で着用しているらしい。

「何で怒るの。そこの真っ裸だって、アヤトのパンツ履いてるだろ」
「これは新品だよ!…あっ!まさかあんた、下着まで借りたって言わないよね!?」
「まさか。ブラのサイズが違うから、無理だよ。下も然り」
「んああああああンッ!?」

ああ、ミカ。キリさんに胸のこと言うと怒るのに。
下半身太りが加速してることに触れると、更に怒るのに。
何で二ついっぺんに言っちゃうかな。
…でもねえ。

「何だよ!乳がある方がそんなに偉いってか!?私の服は小さいから、胸が目立っていいってか!見せつけやがって!このアホ!アホ!アホおおおおおおおお!」
「…うぜえ」

がっくんがっくん揺さぶられているにも関わらず、ミカはしれっとした顔をしている。
そんな彼女の表情はいつも通りだが、服装が全然いつもと違う分、目のやり場に困る。
何せ、揺れる程のボリュームは無いにしろ、キリさんよか形がはっきりと分かるからだ。
胸が。
…つくづく思うけど、ミカって、体つきや物の好みとか、明らかにキリさんよりも女性らしいのに、どうしてこうも、根が男らしいのだろうか。
育ってきた環境や今の職場環境を踏まえても、好みは女性らしい、体格も全然中性的じゃない、むしろちゃんと女性らしいという、性格まで女性らしくなる条件がバッチリ揃っているというのに、何故こうも性格に影響がないんだ。…もっとも、僕が彼女の「女性らしい性格」を知らないだけなのかも知れないけど。

「…それよりキリさん、状況説明してくださいよ」
「師匠の悲しみを『それより』って!」
「いいからとっとと話せや」
「ハイ」

情けねえ師匠は、僕がちょっと厳しめな声と目つきをした途端、ミカから手を離した。
…うん。取り敢えず、ミカのことはいいや。まずは⑤のカオスについて、説明が欲しい。そうすれば、場合によっては、散らかった種類については許してやってもいい。…どれもこれも、まだ急ぎのものじゃないからな。

「ええと…。まず、アイ兄さんが取り調べ中に、ばったりと倒れたんだ。多分、酔いが回って眠くなったんだと思う」
「(何かミカみたいだな)…ええ。で?」
「余計なことする奴がいなくなったんで、裸王さんにパンツを穿いてもらおうとしたのよ」
「はあ」
「したらさぁ、何かこう、『僕の自由を奪わないでください!』って言って、事務所中を逃げ回りだしちゃって…。お蔭で書類は落ちるわバラバラになるわで、もう散々!ようやくパンツを穿かせて、取り敢えず牢屋に入れ終わって一息ついた時に、あっくんが帰ってきたって訳」
「ああ、成る程…。で、パンツを穿かせるまでの間、知らず知らずのうちに、床に寝たままのアイさんを踏んだり蹴ったりしてたって訳ですか?」
「うん、まあ…。でも!でもね!私、ちゃんと仕事してたよ!悪くないよ!」

確かに、仕事をしていたのは偉いと思う。
一般人ならこの時間、普通は汗水たらして働いているってことは、ひとまず置いといて。

「時にキリさん。…この散らばった書類は、元から机の上にあった物なんですか?」
「?…そうだけど?」
「ふむ」
「『ふむ』って何!?ちょっと怖いんだけど?」

怖い?
そりゃそうだ。

「こちとら、怖がらせるためにやってんですよ」
「…へ?」

だって、考えてもみてほしい。
人柄は穏やかにして素直。そんな人が事情聴取中、唯一拒否したのが「パンツを穿く」ことだ。
そんな頑なな信念を持つ人に対して、パンツを穿かせるのにどれだけの労力がかかるのか、考えはしなかったのだろうか。
結果として、床に倒れたアイさんに気付くこともなく、たんこぶまみれ・足跡まみれにしてしまう程、キリさんと裸王さんは暴れまわることになったというのに。

「つまりですね。『どうせひと悶着起きんだから、ちゃんと大事なものは非難させとけよ』って言いたいんですよ!このアホ!!」
「アホって言うなよ!弟子の分際で!…ちょっとミーナ!弟子に襲われそうなんだけど!助けてよ!」
「ああっ!汚ねえ!」

まさか加勢するとは思わないけど、こんな時ばかり強い奴を頼るだなんて!
『ド○えもん』のス○夫かよ!?

「ん~?」
「…あ」
「おや…」

名を呼ばれた、○ャイアンのポジションいる人は、気だるげな仕草でこちらを見てきた。
片手には何故か、水滴が沢山ついたビール瓶。

「あ。あれ、私が飲もうと思ってたやつだ」

素のキリさんの声が聞こえた途端、ミカの手の中で、ビール瓶が音を立てて割れた。



「うっ、うっ…。雛祭りに続いて、またしても…またしても…!」
「あんたほんっっっといい加減にしろよな!?学べよ!過去の教訓からよ!何で酒をミカの傍に置いとくんだよ!?」

もっとも、それはミカにも言えることだけどね。
「風呂上りにキューっと一杯」、とでも思ったのだろう。軍にいた頃は決してアルコールに酔わなかった、というミカは、自身を過信して、缶ビールではなく瓶ビールで「キューっと一杯」やってしまったらしい。
そしたら彼女は、雛祭りの時同様に暴れた。余程アイさんが嫌いなのか、アイさんを凝視したと思ったら、アイさんを窓の外にブン投げて、ますます暴れた。
その衝撃で簡易牢屋は破壊され、裸王さんにも被害が及びかける事態となった。
しかし、酔っても書類には細心の注意を払い、裸王さんには一切手を上げなかったミカは、やっぱり仕事人間というか、何というか…。

「酒で暴れるミカって、こうも恐ろしいんですね…」
「あっくんは初めて見たんだっけ?…ああもう。ここまで酷く酔うだなんて、きっと軍にいた時と今じゃ、体質が変わっちゃったんだろうね。軍にいた頃は気が張りっぱなしだったんだろうけど、今は比較的平和な環境にいるからなぁ。加えて、今日はオフの日だし。ミーナも、気が緩んだのかも」
「え?」

万年戦士みたいな、ミカが?
…でも確かに、ミカはオンとオフじゃあ、雰囲気が違う。オンの時は絶対、天然の「て」の字も出さないし、何があっても乱れない。
だけど、オフの時のミカはすさまじい。オンの時とは違う意味ですさまじい。
真面目くさった顔で変なことを言ったりやったりしたかと思えば、随分楽な格好で、ソファでゴロゴロする。ソファの下には、ちゃっかり簡易ゴミ置き場のようなスペースができあがるのは、もはや咎める気さえ起らない。
…うん。認めざるを得ない。オフの時のミカは、普段のキリさんといい勝負な「だらけ女子」だ。

「アルコールに強かったってのも、それが仕事の場だったからかもね。体質云々よりもさ」
「あり得ますねぇ」

そう言いながら、僕はキリさんに許しをもらって、居住スペースにある、リビングに向かった。
リビングのドアを開けると、ソファの上にはミカが、ソファの下にはアイさんが、まるで丸太のようにゴロリと放置してある。
因みにアイさんは、床の汚れと靴跡で汚れてしまったため、石鹸で汚れを落として着替えさせたのち、ここに置いているんだ。…チクショウ。また僕の衣類を貸し出す羽目になったじゃないか。
でも、まあ、しょうがない。酔っ払いには何を言っても無駄だし、酔っている隙をついて憂さ晴らしをする程、僕は幼稚じゃない。
多分。

「にしても、酒に酔って好き勝手やって、その挙句に爆睡するって…どんだけ似てんだろうな。この二人」

本人達には、決して言えない共通点だけれどね。
同じ血筋じゃないはずなのに、ここまで似る人達って、意外と珍しい。

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