2017-11

「Doll」⑥

こんにちは(或いはこんばんは)!
奥貫阿Qです。

8月に入り、夏休みもあと1か月を切った…と思われる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
私阿Qは、大学でとっている資格の関係で、9日間の実習に行ってまいりました。地元の博物館に!
利用者として訪れることはありましたが、学芸員の実習で訪れることは、きっとあれが最初で最後でしょう(でなければ単位落としたってことになる…)。
土器の発掘のお手伝いをしたり、彩色の地図を本の袋綴じの中から見つけたり…色々な体験をさせていただきました。、
自分の至らなさを思い知った実習でもありましたが、今まで通った館のことをよく知る、貴重な体験でもありました。
この体験を、またどこかで生かす機会があればいいな、と思っています。

さて。その密度の高い実習を終えてから書き上げたのが、今回のお話でございます。
何だか大して枚数書いてねーやんってな量ですが、それでも読んでいただければ幸いです(汗)
今回、ようやく「謎の男」の名前と立ち位置が分かりますよ!

では、また再来週!
次はどうやって話を持っていこうか…。



「Doll」⑥

(byアヤト)

「キリさーん。只今戻りました」
「お。お疲れ様。どう?ミーナと兄さん、落ち着いた?」

事務所に戻ると、お茶を啜るキリさんが僕を出迎えた。
その横の簡易牢屋の中で、裸王さんがパンツを脱ごうとしていたので、キリさんはすぐに裸王さんに視線を移し、「コラッ」と叱った。

「こっちはご覧の通りだよ。ちょっと目を離すとすぐこうなんだから。今、この人の家族について調べてるところ。連絡して迎えに来てもらうんだから」
「それにしては、随分寛いでますよね」
「小休止だよ」

果たして、本当にそうなのだろうか。
僕らの間じゃ、この人はすっかり「怠け者」としてキャラが定着してしまっている。

「その言葉を鵜呑みにする気はさらさらありませんがね、こちらは随分平和でしたよ。丸太みたいに担いでリビングに放置したってのに、二人共ぐっすり寝ています。僕が部屋を出る直前に、アイさんが何かモゴモゴ喋りだしましたが、無視して戻ってきてしまいました」
「まあ、相手は酔っぱらってるわけだし…って、君が最初に言った言葉、酷くない!?」

酷くない。全く酷くない(はず)。

「はぁ…。それにしてもさぁ、あっくん」

へそを曲げたのか、はたまたこれ以上責められては敵わないと思ったのか。キリさんはいきなり話を変えてしまった。
できればこの場合、言うことなすことガン無視し、「悪かった、私が悪かったから…!」とべそをかくまで放っておきたいのだが。

「あの二人、何とも嫌~なところが似てるよねぇ。底意地の悪さ然り、執念深さ然り、悪酔い然り」

偶然、僕が少し気になっていたこと。それに触れてきたものだから。
僕は思わず話に乗ってしまった。
話すだけ無駄だってことは十二分に分かっている。職務の時間だって、お喋りで削る訳にはいかない。
でもな…。ちょっと、モヤモヤしていたんだよな。個人的に。

「…それ、僕も思ってました。血縁者でもないのに、不思議だなぁと」
「ね。てゆうかさぁ、ミーナの実の家族や、アイ兄さんの家族って想像できないよねぇ。親とか兄弟とか、どんな感じだったんだろう」
「案外、ああいう人達の親ほど、まともな人なのかもしれませんよ」

適当にそう言ってみたものの、言われてみれば気になるな。ミカやアイさんの家族。
ミカは確か養子に貰われて、義父は猟師(元軍人)だと聞いている。アイさんも、昔は嫁さんがいたとか言っていたよな。
しかし、この人達と血の繋がった家族の話は、とんと聞かない。
ミカは覚えていないと言うし、アイさんは何も話さないんだ。…いつか、分かる日が来るのだろうか。

「まともな人て…。アイ兄さんは知らんけど、ミーナの親は。何で子供を一人ぼっちにすんのさ」
「親がミカとはぐれたってことも考えられるでしょう?」
「そりゃあそうだけど…」

ミカと同じく、実の親の顔を知らない我が師は、首を傾げた。
僕とは違い、キリさんはあの人らの家族が、特に気になるようだ。キリさんも、自分の親兄弟の顔を知らないからかな。

「うーん…。全然想像つかないや。あの子らの親や兄弟」
「まあ、そもそも実際に会ったことがないでしょう。会ったこともない人を想像するって、難しいことですよ」
「ウン…。じゃ、思い切ってさ、アイ兄さんに話を聞きに行こうかな。何か話してくれるかも」
「これは憶測ですがね。アイ博士も、自分の親兄弟を知らないのかもしれませんよ。だから、今まで自分の親兄弟のことは話さなかったのでは?」

親兄弟が元からいないため、自分と似た性質のミカに興味をひかれ、そのままつるみだした。ミカはミカで、アイさんに振り回されるうちにどんどん悪い方へ行っちゃったのかもしれない。
キリさんの意識が、僕とは違う方へと向いてしまったので、僕は結局、自分の疑問を自己完結せざるを得なくなった。
結局時間の無駄になっちまったなぁ。

「あの~」
「ン?」
「ほ?」

僕でもキリさんでも、ましてや酔いつぶれて寝ている二名でもない声が、耳に入った。
誰の声かは、確認しなくても分かる。簡易牢屋から声が聞こえてくるなんて、もう誰かハッキリ分かってしまうだろう?

「どしたの?裸王さん」

追いかけっこしているうちに打ち解けたのか。キリさんはタメ口で裸王さん(パンツ穿いてる)に問う。

「喉でも乾いた?お茶持ってこようか」
「いえ、私のことではなくてですね」

裸王さんは、自警団事務所の扉を指差した。

「お二人が話をしている際、扉の前で『バタッ』て音が聞こえたんですよ。念のために、見た方がいいのではないかと…」
「扉の向こうで?何だろ」

取り敢えずあっくんは裸王さん見ててね、と言い、キリさんは扉の方へと行ってしまった。
それを好機と思ったのか。コンマ秒でパンツに手をかけた裸王さんを、これまたコンマ秒で机の上にあった消しゴムを投げつけて止める僕。
「見ててね」とは言われたが、「パンツ脱ぐのを止めないでね」とは言われなかったからな。ここは、自警団員としての職務を優先させてもらった。

「あなた、『見ててね』と言われただけじゃないですか」
「確かにそうですが、そんなもんまで見る気にはなれませんので」

投げつけた消しゴムが額に当たったからか。でこを真っ赤にした裸王さんが、講義をしてきた。
僕も、酔っ払いとキリさんを相手にして、少しイライラしてたからな。そんな申し出に、聞く耳を持てなかった。
そのまま自警団員VS露出狂の戦いの火蓋が切って落とされる。
と、思ったのだが。

「シンタ!シンタだよね!?どうしたの!?」

悲鳴にも近いキリさんの声が、僕らのちっさな戦いを止めた。

「どうしたんです、キリさん」

「次こそ勝負しましょうね!」という裸王さんは放置して、僕は急いでキリさんの元へ向かう。
この人は、もう僕より十五センチは背が低い。キリさんの頭越しでも、十分に扉の向こうの様子が分かった。
様子を窺う程度から、一気に大きく開かれた扉の向こうには。

「…何ですか、これ!?」

そこにいたのは、確かにシンタ君だ。
だがどう見ても、今の彼は普通じゃない。
まず自警団事務所の前で力尽きてるし、服や髪には、汚れやほこりが目立つ。
まるで誰かに散々打ちのめされ、転びながらも何とかここに辿り着いたというような態だ。

「あっくん、急いでアイ兄さん起こしてきて!私は団長に電話するから!」
「了解!」

時刻はちょうど午後三時。
夏場故、まだまだ日夕方には程遠いこの時間帯で、大事件の予感がする事に出会ってしまった。


(by???)

「Mark.I…ふむ。成る程、Mark.Iの姉妹版は、確かに確認できるな」

怒るだけ怒り、十分に気分が落ち着いた男は、ミハエルがアイのクリニックに行くときに持っていた板…タブレットを操作していた。
見ているものは、中にダウンロードされていた論文だ。
もちろん、今男が生きている時代は、インターネットが既に滅んでいる時代であるため、「タブレット」も「ダウンロード」も、その存在・方法は、もう図書館にある映像資料でなければ確認できない代物だった。
加えて言えば、この映像資料も二十年前に、カザミで「先の時代の映像資料郡の奇跡的な発見」があった後に、その映像資料の復刻版として登場したものだ。最近のカザミは、この発見以後ほとんど新しい機械製品を生み出していないため、タブレットが使用できる環境が整うまで、まだまだ時間がかかるだろう。

「主峰の研究所で、この板…タブレットを発見して以来、ずっと中の論文を読んできてはいるが、何だか腑に落ちない。Mark.Iは薬品や新しい医療技術などのために造られたものだろ?そして、その姉妹版は軍事に関するAIで、ここでは『M0.5』と書かれている。…何故Mark.IはAIと表記されず、この姉妹版だけAIと表記されているんだ?何で姉妹版なのに、『Mark.~』と表記されず、『M0.5』と表記されているのだろう。普通、姉妹版なら似たような名前にするのだと、俺は思うんだが」

先の時代はそうではなかったのか、と、男は考える。
しかし、それでもよく分からないのは、「0.5」という数字だ。
何故「0.5」という中途半端な数字がつけられているのか。
意味があって、このような数字にしたのだと思うのだが。
…もしかしたら。

「0.5と0.5を足せば1になる。Mark.Iの『I』を『1』に見立てた、という考えは性急すぎるだろうが、もしかしたらこの姉妹版には、発見されていないものがあるということなのではないか。少なくとも、あと一体は…」

男はもう一度、タブレットで見られる論文全てに目を通した。
だが、そこにはMark.IとM0.5のことしか書かれていなかった。

「やはり、無理か。元々この論文には、Mark.IとM0.5の性能のさわりだけしか書かれていなかったからな。肝心の設計図や詳細な記録はない。ミラの体は、ここに書かれていることからMark.IとM0.5の構造を俺が勝手に解釈して造ったものだから、参考にもならない…」

行き詰ってしまったか、と言うと、男は自分の髪をぐしゃぐしゃにして、ため息をついた。
このタブレットに論文を残してくれなかった者への、些細なあてつけのつもりである。

「…気晴らしに、ミラの様子を見るか」

白衣のポケットをゴソゴソと探り、男は、アイが持っているリモコンよりは随分とゴツいリモコンを取り出した。
複数のボタンのうち、一番目立たないところにある黄色いボタンを押すと。
床が消えた。
正確には、床が男の立っているところを起まりに、さぁっと色が抜けて透明になったのである。
透明な床のすぐ下には、青白い光を発する液体がたたえられている。
男が荒っぽく歩いても全く足音が響かなかったのは、床下にこのようなプールがあったからだ。

「…少し、液体の色が薄くなってきてしまったな。これじゃあミラは過ごしにくいだろう」

男はそう言うと、液体の底にいる人影を見つめた。
このプールの深さは、おおよそ十メートル。
風もないのに水面が揺れているため、底に誰がいるのかは分からないが、男にはそれで十分だった。

「一日の大半を水の中で過ごさなければならないなんて…。駄目な兄でごめんな」

水底にいる人物に囁くが、返事は来ない。
暫く、名残惜しそうにその人物を眺めている男だったが、やがて諦めたように顔を上げ、また元通りに床を戻してしまった。
床を戻す寸前、水底の人影の口が動いたことに、男は気が付いていない。

『リヒト兄ちゃん…』


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