2017-11

「Doll」⑧

こんにちは(或いははこんばんは)!
奥貫阿Qです。

ようやく、物語の核となる情報をバラしていく段階に入り、ウキウキしています。
もっとも、そのウキウキが、ここ最近の湿気の多い天気にやられ、水を差されている気分になりますが…。
何で雨の日って、ああもやる気や元気をそがれるのでしょうね。

しかし、それでも続けていきますよ。このシリーズ!
本格的なネタばらしの時期は、リヒトさん(謎の少女・ミラさんの兄。最近出させてなくて、友人に申し訳ない…)が、再び出てくるころになりそうですが、それまでは、少しずつ書き進めていきます。
主に、味方サイドのビン底眼鏡に頼りつつ。

それでは、そろそろ本編に移ります。
また再来週、お会いしましょう!



「Doll」⑧
(byアヤト)

「…音、しないね」
「ええ。無音ですね」

リビングの様子を(見れないけど)見に来た僕とキリさんは、閉ざされたリビングの入り口の前で立ち止まった。
さっきまで色んな音がしていたはずなのに、今は無音。
それも、人の息遣いらしきものも感じられないなんて、どういうことだ。

「これ、もしかしなくても何かあったよねぇ?」
「ええ…。アイ博士のお叱り覚悟で、開けます?」
「開けます」

きっと、僕よりも不安な気持ちが強かったのだろう。
僕を押しのけるようにして、キリさんはドアノブを掴み、勢いよくドアを開けた。

「アイ兄さん!どうしたの!?」

その途端だった。

「ウワアアアアアアッ!」
「あっち!あちちちちちッ!」

頬を嘗める熱風!目を射る光!
その二つを真正面から食らい、僕とキリさんは廊下に尻餅をついた。
一瞬で光は消えたからいいものの、熱風は未だに熱く吹き付けてくる。
一体何度くらいあるのだろうか。病人がいるにもかかわらず、リビングには陽炎が揺らめいている。
ここはアラビアの砂漠か?否、温帯の国・カザミである。
なのに何で湿気が限りなく少ない空気を感じなきゃならないんだ。

「おほっ!こっ、こげっ!私の髪がっ!」
「今は気にしないでください!それよりも室内が!」

ただの民家で何百ルクスあるかも分からない光が発生するなんて、あり得ない。火傷しそうな暑さだが、水でもかぶって調べた方がいいのかもしれない。
そう思った時だった。

「!」

さっきの比ではない熱が、僕の真横を通り抜けて行った。
幸い光を放っていなかったので、目には大してダメージがないものの、左頬と左手がヒリヒリする。
さっき通った「熱」で、火傷を負ったのだろうか。
たかが通り過ぎただけなのに…恐ろしいほどの高温だ。

「アツッ!」

僕の後ろで、キリさんの声が聞こえた。
恐らく、キリさんもあの「熱」にやられたんだ。
無事なのか!?と思い、振り返ってみると。

(…ぷっ!)

恐らく、仕込みではないのだろう。
ないのだろうけど、キリさんの着ている服が、妙におかしなことになっていた。
先程の「熱」で焦がされたのか、キリさんの服や体がはあちこち煤けている。
ここまではいい。よくないのは、その煤け方だ。
どうしてそうなったのかは分からないが、キリさんの着ているシャツの袖は、左右両方とも真っ黒。髪も、両サイドだけ、茶髪から黒髪になってしまっている。終いには、「熱」で目を痛めてしまったのか、煤けた袖で、しきりに両目をこすっている。
うん。これは、あれだ。
分かり易く言えばパンダだ。非常事態なのにもかかわらず、まるで仕込んでいたかのように、キリさんはパンダのような感じに煤けてしまっている。
その場違いの風景は。

「うっ…ぷぷっ…!」


情け容赦なく笑いを誘う。
この場で笑うなんてありえないだろ、と、僕はこっそり自分の腿を抓って、表情筋を叱咤した。
だが、空気を読まない奴が、ここにはいた。
さっきまでリビングに閉じこもっていた、あの男。
キリさんは目をこすったままだし、僕は笑いをこらえて下を向いているから、その存在に気付けないでいた。

「あははは…。いやぁ…あっついほどのやる気だねぇ。まさにパッションだ」
「…え?」

あの熱気と閃光の中に、いたのだろうか。
てっきり逃げたとばかり思っていた人の声が、リビングから聞こえてきた。

「あ、アイ兄さん!?」
「よお、キリちゃん。まるでカンカンみてぇな顔になっちゃってまァ」

カンカン…パンダの名前か何かか?
確かにキリさんは、煤が付いた手で目をこすってしまったので、顔にパンダのような模様ができているけど。

「え…」
「なに、その姿…」

アイさんは、そんなこと言ってる場合じゃないだろ。
リビングの方を見て気が付いた。アイさん、キリさんと違って、全然洒落にならない状況になっているというのに!
リビングにはあちこちに煤が付いているだけ、シンタ君とその周辺は不思議と無傷で済んでいる。だがその代わり、アイさんがボロボロに痛めつけられていた。顔をつけに付けたまま喋っているので、一瞬、熱と光から身を守るために顔を伏せたままでいるのだと思ったが、そうじゃない。近付いて気付いてしまった。
まず、服が焼け焦げたように、所々大きな穴が開いてしまっている。その穴の向こうには、ズクズクとやけた肌が見えた。メガネも熱と光でやられたのか、溶けた瓶みたいにレンズがゆがんでいる。この際、目が無事ならそれでいいのかもしれないけど。
そして、一目見てただごとじゃないと分かったのは、服の穴の穴と同じ大きさまで広がっている大火傷だ。
酷い火傷なんて、もう随分目にしていないから忘れたが、これは…一番程度の酷いものじゃなかっただろうか。それに、火傷の範囲が広範囲過ぎる。服ごと焼かれているから、細かい処置ができない。
つまり、アイさんは起き上がらなかったんじゃない。起き上がれなかったんだ。
ここまでの火傷の処置ができる医者を、僕らは知らない。
できるとしたら、ここに転がっている患者自身だろうが…。

「アヤトもよ。そんな辛気臭ぇ顔すんなよ。情けねぇ」
「だって…この怪我、カザミでもどうしようもないものですよ」
「カザミでどうにもならんなら、自分で治すまでだ」
「…は?」

何を言っているんだ、このオッサンは。
それができるなら、僕はここまで悩んでいない。

「…アイ兄さん、もしかして熱に浮かされてる?」

キリさんも、心配になってアイさんの顔を覗きこんでいた。
だが、アイさんにとってみれば、それは随分と不快なことだったらしい。

「俺は至って正気だよ。…まあ、にわかには信じられまい。状況を説明する前に、一つ、見せつけておこうかね」
「…何を?」
「何をする気なんです」

僕とキリさんの疑に、アイさんは不敵な笑みを受かべて言った。
低い声で話す上、頬が床に張り付いて、聞き取りにくかったけど。

「人類が驚愕するような存在は、意外と近くに転がってるってこと」

アイさんはおもむろに立ち上がった。
床に張り付いていた頬や、その他の皮膚がベリベリと不快な音を立てているが、それも無視して立ちあがる。
まるで、人体模型のような酷い有様だというのに。
この人には痛覚がないのか。

「よく見てな」

何事もなかったかのようにすっくと立ち上がったアイさんに、異変は起きた。
まず、頬の火傷が消えたのだ。
見えない刷毛でスッと色が塗られたかのように、火傷は消えうせ、健康な肌が現れた。
続いて、肩、腹、脚と、とにかく火傷が確認できた場所が、一瞬のうちに健康な肌へと戻る。

「まだ驚くなよ。変化は続くぜ」

アイさんがそう言い終わらないうちに、また変化が起きた。
今度は服に。
穴だらけだった服が、シミひとつない、それどころか、新品と相違ない綺麗な服へと変わったのだ。
皮膚の変化よりも早い変化に、僕達は目を疑った。

「…な?あんな怪我、どうってことねえだろうが」
「…何で、あんなことができるんです」
「生まれつきって奴?」

ヘラヘラと笑いながら、アイさんは言う。
恐ろしい人。
そう思わざるを得ないような人だった。この人は。
でも、よくよく考えてみれば、この人は最初から変だった。
僕を干物にした時も、キリさんを宙に飛ばした時も…キリさんとミカが入れ替わった時も。
日常の感覚が麻痺してて、気にも留めなかった。
この人は頭がいいから、ということで片付けていたが、今まで見せつけてきたもののうち、カザミの科学でもどうしようもない技術があった。
そもそも、あれだけの発明をするための資金は?
ここでのバイト以外、ちまちま事業的なものをやってるらしいということはキリさんから聞いていたが、それでも、一年かそこいらで、それも一人で、あれだけの発明ができるものか!帳尻が合わない!

「…アヤト。中々カザミの暮らしに慣れてきたようだな。カザミの科学…つまり、現時点で世界最高レベルの科学の限界が分かった今、俺がやっていることのおかしさにも気付いたか」

気付いちゃいけないことに気付いてしまったようで、僕の口は、虚しくパクパクと動くだけだった。
ここで言うべき言葉は決まっている。
それなのに、口は虚しく動くだけだった。

「…ねぇ、」

別に、アイさんのように特別なことができる訳じゃない。そんな訳じゃないのに、まるで僕の気持が伝わって、僕の口の代わりをしてくれているような感じだった。

「アイ兄さんって、一体何者なの?」

黙ってるだけかと思ったが、こういう時、頼りになるんだよな。

「教えてくれない?」

…キリさんは。

「…知りたいかい?」

アイさんの不敵な笑いにも負けず、キリさんは頷いた。
それを覚悟ととったのか、アイさんはおもむろに、掛けていたメガネに手を添えた。

「多く言っても分からねえだろうから、見て分かるもので示させてくれ」

…何をする気だ。

「俺は、こういうものだよ」

パッ、と、メガネを取りやがった。キリさんが粘ろうが、ミカにぶん殴られようが、全く素顔をさらさなかったこの男が。

「…けっこう、怖い色してるだろ。この目」

この時、キリさんですらも、言葉を無くしてしまった。
信じられなかった。
メガネを外した顔は、ミカとほぼ同じ。まるでよくできたミカの蝋人形を見ている感じだ。
唯一ミカのパーツと違うのは、目の色くらいだろうか。
ミカの、赤が混ざった茶色とは対照的に、この人の目は真っ青だ。
それも、海の色でもない、空の色でもない、まるで科学性のインクのような、人工的な青をしていた。
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