2017-11

「Doll」⑪

こんにちは(或いはこんばんは)!
ひっさびさに更新を遅刻してしまった、奥貫阿Qです。

最近は、大体日曜日に隔週で更新しているにも関わらず、遅い更新になってしまってスミマセン(汗)
土曜日は卒論(少々)とバイトで、日曜日は理由なきダルさにしてやられてしまいました・・・。
…ええ。更新、待ってた方々、お待たせしてしまって、申し訳ないです(汗)
明日が祝日だったからいいものの(よくない)、今日、何とか最新話の修正・更新をすることができました(汗)(汗)

今回はこの間の短文とは違い、いつもと同じくらいの長さです。
珍しく、友人宅のお兄さんや、うちの(インドア、陰鬱、陰湿の気質がある)男性陣が目立つ回に仕上がりました。
そのうち、女性陣も目立たせなきゃなぁ…。

では、遅れてしまった分、さっさと本編に入ります!
再来週も、よろしくお願いします!



「Doll」⑪

『…リヒト兄ちゃん』
「やあ、ミラ。お前の体のベースになるやつ、ようやく見つけてこれたよ」

ミハエルを襲撃した謎の男、もといリヒトはそう言うと、背負っていた人物を乱暴にプールに放り込んだ。

「流石、軍事用AIなだけはあったよ。M0.5(エムハーフ)は。普通の人間なら、音をあげそうなくらい動き回っていたのに、けっこう涼しい顔してたんだ。中身だけじゃなく、体も大したもんだね」

ゴボゴボと、ミラと同じ水槽に沈んでいくミハエルには目もくれず、リヒトは水槽の底に横たわるミラだけを見ていた。
人間を見る目というよりは、むしろ人形に話しかけているかのような目で妹を見ている様は、何とも異質である。

「これから、こいつの体を初期化する。それが終わり次第、回線の切断もしていくから。この体はただの端末だから、M0.5本体との回線を切らないとダメなんだよ。それで晴れて人間とほぼ同じ体の仕組みだけが残り、ミラと同じような姿に整形できる」
『…M0.5はどうなるの?』
「別にどうにもならないさ。言っただろ?こいつの体は端末だって。端末は本体と同期しているんだけど、こいつの場合、情報は人間の脳とほぼ同じスピードで、本体に保存されるらしいから。体だって、情報と照らし合わせて、全く新しいものが造られると説明があったよ」

そう嘯(うそぶ)く言う兄の顔に、ミラは少し、プール内にあるカメラで拡大して見なければ分からないくらいに、眉間に皺を寄せた。

『…それで、いいのかな。M0.5は納得してくれるの?思い出の詰まった体かも知れないのに』
「…ミラ。機械ってのはね、人間よりも早くガタがくるようにできているんだよ。ご覧。M0.5の体はもう成人しているように見えるよ。二十年も、それも武器が内蔵されている端末が動くのは、そろそろ辛いんじゃないかな」
『…』

兄にそう言われても、機械の構造をよく知らないミラには分からなかった。
自分のすぐ近くまで落ちてきたミハエルには、傷なんてどこにも見当たらない。それどころか、先程聞いた兄に対するミハエルの応戦の話を思い出し、どうもこれには、「ガタ」という言葉が当てはまらないような気がした。

「どっちにしろ、もうこいつには死を待つか、初期化して命を永らえるかの二択しかないんだ。だったらここで、古い体から離れさせて、新しい体に移してあげることが優しさなんじゃないかな」

(byアヤト)

「でも、どうしてミーナがそんな体に…」
「もったいつけるようで悪いが、その説明は後だ。それよか、早くあいつの居所を突き止めねえと」
「え?でもミカの体って…その…」

そうだ。確かアイさんは、ミカが燃えて消えたことを認めたはずだ。
ということは、ミカはもういない。つまり…探したくても探しようがないんじゃないか。
あの世以外は。

「いや、いる。アヤト、さっき俺の傷が治ったのを見ただろう。あれと大体同じ要領で、なくなった体を再生させることが可能なんだ。ただし、再生された体は、体を再生させる装置がある場所にまで取りに行かなくちゃならん」
「…アイ博士。それって、体は元のミカでも、私達の記憶がない状態になってたりとか、しませんよね」
「それはない。体のデータはもちろん、これまでの記憶に関するデータもすべて、その装置に送信される仕組みになってるから。体が破損する直前にな」
「よかった…。なら、少し安心です」

僕らは彼女と過ごした記憶があるのに、僕らの記憶がない彼女と会うことになったらどうしようかと思っていた。
だけど、ミカに記憶があるからといっても、それはまだ「少し」の安心にしかならない。

「あと、お前らと話している最中、ラボと通信を取った。ラボから送られてきたデータを見る限り、体の構築も記憶の伝達も上手くいったらしい。あとは、体が構築された際に出た熱源を探し出しさえすれば、あいつは見つかるだろ」
「…そうですか」
「よかった…けど、何か複雑」

アイさんの言葉に、キリさんは不満そうな表情だ。
そうなってしまってもしょうがない。
人だと思っていたけど実は機械で。アイさんとほぼ同くらい、つまりキリさんが小さい頃、もしくは生まれる前から存在していて。部屋が煤まみれになるほど発熱・発火するような特性があって。挙句の果てに、何度死んでも蘇るような体を持っていて。
「幼馴染」だの「親友」だの言っていた人の正体が、実は人とは全然かけ離れた存在だと次々に思い知らされれば、そんな顔にもなってしまう。
もしこのままミカに再会できたとしても、キリさんとミカは、これまで通りの関係に戻れるのだろうか。
そして、僕も。ミカに対して、色々心配なことができてしまった。

「時にアイ兄さん」
「何だねキリちゃん」
「最後に一つだけ訊いてもいい?何でミーナはああなっちゃったの?」
「…さあな。さっき、シンタの野郎に触れた時から、あいつの様子がおかしくなった。恐らく、誰かがシンタをわざとおかしくして、シンタのついでに、シンタに触れる奴も狂わせようとしたんだろ。あそこまでいかなくても、ミカ以外の奴がシンタに触れても、気が狂っただろうなァ」

一種の、頭をおかしくする伝染病みたいなもんかね、と、アイさんは言った。
…何だそれ。この期に及んで、まだ何か起きるのか。
というよりも…今回の一件に、何者かが絡んでいるのか?誰か分からない、いわゆる黒幕ってのが。

「あれの大元は、俺が若い頃に使われてた処刑用の施術なのさ。大脳の機能を低下させ、その上、小脳の働きをおかしくして、体力の限界まで体を動かし続けるってものでな。大体、愉快犯などの軽率な気持ちで罪を犯した連中を辱めるための処刑方法だったんだが」
「…じゃあ、何でシンタは無事だったの?その施術ってのが、効きにくい体だったとか?」
「いや。施術の方法が変にアレンジされたモンだったからさ」

それを訊いて、キリさんの顔が強張る。
不満に不安が上乗せされた顔を向けられているのに、アイさんは平気そうに話を続けた。

「さっき、シンタに触れたせいで、ミカがおかしくなったって言ったろ。だが、その施術自体には元々そういうことはできない。それを無理に、人から人、ないし、俺らのような人もどきへと脳の異常を伝染させるようにしたもんだから、一人一人の効き目は少なくなっちまったのさ」
「じゃあ、ミカは!」

何か言おうとしたキリさんを遮り、僕は不安から大声を出してしまった。
アイさんは確か、体に何かあった時に、新しい体に今までの体と記憶のデータが送られると言ったじゃないか。
なら、ミカまでおかしくなってしまうんじゃないのか!?

「ン。早く見つけるに越したことはないが、おかしくなるってことはありえねえ。そういうヤバいものは、フィルタに弾かれる」

…なら、いいけどさ。
フィルタってものが何かは分からないけど、多分ミカを守る盾やシェルターみたいなものなのだろう。
こんな時にこんなことを考えるのはあれだけど…生物を模しているだけあって、抜け目ない仕組みだな、と思う。

「…アイ博士、シンタ君にしろミカにしろ、何でこんな目に遭わされたんでしょう?」
「それは分からねぇ。因みに、犯人の目星はついてるぜ?今のところ、身の程知らずなマッドサイエンティストの仕業だと踏んでいる。あの方法は相当頭よくて金持ってる奴じゃないとできねえし、マッドな連中であればあるほど、あの方法を人に試したくなるだろうからなあ」
「…何て嫌な奴なんだ」

アイさん以上に、という若干の皮肉も込めて、僕はそう言った。
そんな僕を見て、アイさんは何を思ったのだろう。不謹慎にもニヤニヤといつもの笑いを浮かべて、こんなことを言った。

「アヤト、随分自警団員らしくなったものだなァ?いち早く市民の心配かイ?」
「いえ。市民の、というよりもミカの心配です」
「…は?」

何故だかアイさんはキョトンとした顔で僕を見る。
何か変なことを言ったか。僕は。

「…アヤトよ。俺ァ、あいつは大丈夫、と言わなかったか」
「言いましたね。それでも僕、ミカの方が心配なんですよ。何の目的でつくられたのかは知りませんが、ミカが何だかヤバい機械である、ということは理解できました」
「じゃあ、何故だ」
「身内だから…じゃなくて、そういう機械だからこそ、です。恐らくミカも突然の出来事にぼうっとなってしまっているはず。そんな隙が生まれてしまう時に、また人攫いにでも遭ったらどうするんです。ミカにとっても嫌な思い出になりますし…自分がとんでもない機械だってことを、嫌でも自覚する羽目になりそうじゃないですか」

僕がそう言うと、アイさんは少し眉間に皺を寄せた。
こんな顔するこの人、初めて見るや。

「それが現実ならしょうがねえだろ。いつかは認めなきゃならねえ時が来る」
「甘い判断ですね、アイ博士。『生き物の模造品』、という例えをするからには、ミカもあなたも、相当人に近い構造を持ってるんでしょう?体といわず、脳、つまり精神の仕組みまでも」
「…だから何だ?」

僕の予想が当たったのと、アイさんの、僕の言いたいことが分かってないかのような問いかけ。
それを訊いて、僕は腹の中で思っていたことをぶちまけた。

「ミカの考え方が人そのものだったら、それ、絶対直視したくない現実だと思いますよ。少なくとも、僕ならそうです。せっかくここまで大きくなって、それなりにやっていける人達に囲まれて。そんな素敵な環境ができているのに、それに水を差されるだなんて…ムカつく」

そこまで言ってしまうと、アイさんは何も言わなくなった。
ただ、ニヤニヤ笑いはもうなくなり、今はただの無表情…いいや。目だけはやたらといきいきした顔をこっちに向けていた。
止めろよ。気色悪いわ。

「…と、いう訳で、悩んでる時間はここまでです。ミカを探して、僕らが彼女に事情を説明しなければ」

そうしなきゃ、ミカと僕らとの縁はこれっきりになる。
今でさえ、自分のことを多く語らないミカのことだ。彼女が好まないタイミングに、無理に自分の秘密が明かされることになってしまったら、彼女はここを去るかもしれない。
そんなことして彼女は、僕が知ってる彼女は楽しく暮らせるのだろうか。
レン国脱出から早四年。卵もどきに入る前の僕は、悲しいことも辛いことも一人で抱え、通行人にさえもガンを飛ばしているような刺々しい奴だった。それが今や、営業スマイルも含め、笑顔で人と接することができるようになっている。
そこまで穏やかになったのは、キリさんの破天荒さでガス抜きがされたおかげだ。
更に、アイさんの暴力的なまでの科学力の差と、ミカ…ここにはいない彼女のフリーダム具合にべそをかかされたおかげだ。
「おかげ」、というよりも、むしろ「せい」というべきことが立て続けに起きたおかげで、僕の日々はめまぐるしく変わっていく。フラストレーションが別のフラストレーションで解消されて、逆に悲しみも辛さも溜まらなくなったんだ。
一人では、何か悲しいことやつらいことがあった時、ただただ耐えることしかできない。そんな暮らし、楽しくないじゃないか。

「各自用意が終わり次第、またここに集まりましょう。では」

これだけ言って、僕は動きやすい服に着替えようと、リビングを出た。

『…信じられるか?キリちゃん。あれで無自覚なんだぜ?』
『うん。もう、ミーナや兄さんが機械の体を持ってるとか、そういうのどうでもよくなっちゃった。あの子にあそこまで言わせるる程、ミーナって魅力あったんだねぇ…』

何故か、リビングからこんな話が聞こえてきたが。
一体、何の話をしているのやら…。
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