2017-09

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「Doll」⑫

「Doll」⑫
(byミハエル)

頭が痛い。
まるで脳を無理矢理引っぺがされているような、あり得ない痛みがする。
こんな理不尽な痛み、山賊どもに攫われた時以来だ。
村の人身御供になって。

『…て』

理不尽だ。
私が一体何をした。

『…そう。そのまま怒っていて』

…は?
何、この声。
痛みで幻聴だなんて、どういうこと。

『理由は、何でもいいの。とにかく怒って。痛みに意識を手放さないで』

手放すもんか。
これでも私、仲間内じゃ強い強いと評判なんだから。

『怒って。怒って。…そして早く、そこから出て!』



自警団で、ミハエルを救助しようと動き始めた頃、リヒトのラボでも、ある動きがあった。

「ああああ!痛い!何なんだこのセキュリティは!」

コントロールパネルの前で唸るのは、このラボの主、リヒト氏その人である。
ミハエルの感情・記憶などの一切合財を体から切り離す…と意気込んでいた彼だが、作業の六割が終了したところで、ある問題に見舞われていた。

「ああああああ!」

ミハエルこと、「M0.5(エムハーフ)」の抵抗である。
先の時代のコンピュータにも、システムに有害な攻撃を受けた場合、攻撃からシステムを守る手段があったと、リヒトは知っていた。
が、まさかまさか、バーチャルだけではなく、リアルにも対抗措置を取る手段があるとまでは知らなかったようである。
その手段とは、自分に害を与えているコンピュータ、ないし、人物の特定をし、反撃をするというものである。自分と敵対するコンピュータ、若しくは人物の特定が完了した後、M0.5はコンピュータであればハッキングを行い自滅を促す。しかし、人であれば、周囲の機械類、ないし、機械から機械へと伝達を行い、例え機械のない自然の中へ逃げこまれたとしても、その人物の周囲にいる生物を操って、排除するようにする、という執念深いものなのである。その方法は、リヒトがシンタに行った方法と似ている。
まるで「ミハエル」という「個」を、そのままシステムに当てはめたかのような、えげつない手段であった。

(あの人のイライラが私に伝わる度に、兄ちゃんの機械が誤作動を起こしていたけれど…。まさか、ここまでえげつないことになるだなんて)

コードに締め付けられ、暴走して熱を持ったコントロールパネルに顔を押し付けられているリヒトを見て、「彼女」は少し同情した。

(でも、凄いな。ちょっと気絶しただけですぐに復活しちゃったよ。そして、痛みでおかしくなることもない。…一体、何の仕事をしてる人なの?ちょっと怖い)

当たり前のことだが、「彼女」はミハエルが、軍人を経て現役の猟師・自警団の教官を務めていることなど、知る由もない。

(でも、チャンスだ。はやく、行かないと)

人間と違い、「彼女」の体には浮力は生じない。
水よりも体が重くなってしまっているからだ。
それを利用し、「彼女」は腕を伸ばし、ソロソロとプールの底を這って行った。

(お願い、あの男の子。まだ自警団にいて!)

怒りに燃えるミハエルと、その怒りから来る不幸に見舞われる兄を横目に、「彼女」は進んでいく。
目指すのは、プールの底にあるマンホール大の蓋。兄は時々、ここから水を、外の世界に流すのだ。
流れの先にあるのは、大きな森と川。「あの男の子」に会った日、「彼女」は確かに、それを確認したのだ。
実際にこの蓋を取り、水ではない、ここに満ちている液体に流されて。


(byキリ)

アヤトの機転(?)により、私達は異常なほどの速さで、いつもの結束力を取り戻せた。
いやぁ。愛の力って凄いよ。自覚・無自覚関係なしに、力を発揮するなんて。

「何だこのラブロマンス。まじファック」
「キリちゃん落ち着け。気持ちは痛いほど分かるが」

事務所に来ても、まだ落ち着けないでいるこの私。アイ兄さんにこうして窘めるものの、あっくんはミーナのことしか考えてないし、裸王さんはお昼寝中だから、こうしてぶつくさ文句が言えるのだ。
ホント落ち着けないて。
実質リーダーを差し置いてこの行動力はヤバいて。
状況をわきまえなくてもいいなら、今すぐ旧あっくんと同じ、リア充爆発しろの側に回りたいわ。
そう。今すぐに。
恋の力で私よか優秀なリーダーが生まれる前に、その芽を絶つ!

「ホントに落ち着いてくれよキリちゃん。助けに行くのは、お前の親友だろ」
「親友って何。ある意味アイ兄さんの身内でしょ」
「うわ。冷たい」
「そのうちあっくんから、『妹さん(仮)を嫁に下さい』とか言われるんだァ…」
「いや、言わねえだろ。両想いになった途端、掻っ攫われてそれで終ぇだ」
「へ?」

あっくん、そこまで非常識じゃないでしょ!実質我が息子だもん!
あ、だから逆に!?
いや、逆にじゃなくてもありえるかも!?
だってあの行動力。
団長から愚痴られて知った、リア充のチョコ破壊作戦。
あの行動力に、邪魔者とは敵対関係を築こうとする癖を考えれば、そりゃ十分にあり得るか!

「あ。言っとくけど、オメーのあっくんがあいつを掻っ攫うってことじゃないからね。あいつがあっくんを掻っ攫うって話だからね」
「何それ!そっちのが現実味ある!酷いけど!」

つうか、そんな発想する兄さんも恐ろしいわ。
今はさも「どーでもいいわ」って顔を見せといて、事が起きたら絶対ハネムーンにかこつけて、逃走用のお車代とか用意するクチだよ。
お腹真っ黒だろ。同じ腹黒でも、ヨーロッパハムスター並みの可愛さがありゃ、いくらか許せるのに。

「何してんですか。行きましょうよ。時間ですよ」
「…あィ」

全く…何てキビキビしてやがんだ。この弟子野郎。
今度から呼び名、「あっくん」から「キビ団子君」に変えるぞ!?
今までの仕事で、こんなキビキビ動く事なかったのに!

「だがよ、あっくんや。行くったって、どこに探しに行くのさァ」

この言葉を聞いた途端、全然動かなくなったけど。
つうか…ハィイ!?

「兄ぃいさん!?何!?兄さん現時点で何にも情報持ってないの!?」
「は?さっき言ったろうが。『あいつのことは俺でもどうにもできない』的なこと」
「位置情報すらも!?位置情報すらもノー情報!?」
「『ノー情報』だ。近くにいないからね」
「そ、そんな…」

ああ…あっくんや。
あんたも密かに、アイ兄さんのことを頼りにしていたんだろうね。
私が突っ込み続ける中、あんたは無言で膝から崩れ落ちて、まるで死体みたいに動かなくなってやんの。
この非常事態に一っ言も喋りやがらん。
何なんこの弟子。使えねえなこの弟子。

「探す手立ては!?せめて、探す手立てとかはないの!?」
「ナッシン」
「…使えねぇメカだな」
「キリちゃん酷い」

ホントのことを言ったまでだい。
でも、探す手立てまでないんじゃあ、どうすればいいんだろうか…。

「…よし。じゃあ兄さん。あっくん。ここ最近主峰の研究所を追い出された科学者のリストを見てみよう。こないだ団長から、ヤバい理由で研究所を追われた科学者達のリストがあるってんで、一応もらってきたじゃん?」
「頭のいい科学者なら、今回の犯人って可能性もあるってか」
「そうそう。…ほら、あっくん。燃え尽きてる暇があったらリスト出して。そこの兄さんのデスク。鍵のある引き出しに放り込んであるでしょ」
「ふぁい…」

急速冷凍された我が弟子が、アイ兄さんのデスクにある件の引き出し(何で鍵かけてないの?)を漁る。
開けた途端、事務所内にギョーザや醤油ラーメンのようないい匂いが漂うが、この際、これには突っ込むまい。

「ありました…」
「ありがとうね。…兄さん。ざっと見た感じ、このリストでヤバそうな奴は?」
「んん…こいつ?」

何この見てるんだか見てないんだかのスピード。
電光石火の如き速さで、兄さんが選び出した人物は。

「ユバナの軍医から、主峰の研究員に転職したこいつね。ユバナの軍医って時点で金持ち確定だし、主峰の研究員になれるなら、よほどの頭脳の持ち主でもあるってことだろ。しかも研究のテーマが、『人体の構造と、機械の構造の差を埋める方法』だって。追放理由は、研究テーマを『金の無駄だ』と言われ、殴るけるの暴行を行ったことだと」
「研究熱心なのか、短気なのか分からない人ですね」

そう言うのは、急速冷凍から解放されつつある弟子だ。
私もその意見に同感。

「両方さねぇ。ここだけの話、こいつのことは俺も知ってるよ。極度の研究ヲタであり、シスコン。生きる上で研究と妹以外は何にもいらねえと思ってるらしくて、邪魔が入るたびにキレてたわ。通称、『リヒトって名前の癖に、根は闇みてぇな変態野郎』」
「それただの悪口ですよね?」

リヒトさんとやらのあんまりな「通称」に、ショックで完全復活した弟子が突っ込んだ。

「んん…リヒトさぁん?」

…あれ。あっくんもアイ兄さんも私も、誰もしゃべっていないのに声がするぞ?

「リヒトさぁん…妹さんがそんなに大切ですかぁ…?」

また声がした。そして、「リヒト」「妹」という単語にギョッとする。
またしても誰もしゃべってないということは…。
サッと簡易牢屋のある方を見てみれば、そこにいるのは裸王さん。
彼が今の会話を聞き、寝言を言っていたようなのだ。

「森に逃げるって…あの、字がへったくそな看板のクリニックがある森?ギリギリ国外でしょ…」

…うん?何だこれ?
「リヒトさん」って言葉は気になるけど、それ以外が意味不明だ。
へったくそな看板?クリニック?
そんなもんが、国外の森にあったっけ?入国以来、国外の様子なんて知らんけど。
…あれ?

「…え…」
「ああ…?」

男性陣が、何やら硬直している。
何か気がかりなことが?

「…アイさん。ギリ国外の森に、クリニックって何件あります?」
「今のところ、うちだけだねぇ。しかも字がへったくそな看板のクリニックと言やぁ、まさにうちだ」
「へ…?何であっくん、アイ兄さんの居場所を知ってんの?」

弟子にそう訊けば、彼は意外なことを口にした。

「ミカに教えてもらったんですよ。辺鄙なとこにあるくせに、集客意欲ゼロの、クソみたいな字の看板が印象的でしたね」
「ぐうの音も出ねぇ」

あっくんの口の悪さは仕方がないが、書いた本人が認めてるんじゃ、相当まずい字なんだろう。

「でも、何でこのパンイチ男は、リヒトのこと知ってんの?」
「アイ博士、この人の名前は『裸王』さんです。…キリさん、」
「はい?」
「さっき、裸王さんの家族を調べてましたよね。身元、もう分かりました?」
「ああ、あれ…」

家族についてはまだ不明だけど、裸王さん自身の証言で、職場は分かったよ。

「あれで、主峰の研究員だってさ。いやぁ、世の中奇妙なもんだねぇ」

そこまで言った途端、私は自分で言った言葉に固まってしまった。
…あれ?

「…すべての情報が繋がったようだな」
「ですね。さっそくあんたのクリニックがある森に行きましょう」

そう言って、男性陣はさっさと外へと出て行ってしまう。
あれ?あれれ?と、私一人だけフリーズから解放されなかったけど。
その分、理解した時のインパクトは、男性陣よか凄かったけど。

「やっべぇ!私マジ功労者!」

実質ボッチで自画自賛て、何かイタい。

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ti2958.blog.fc2.com/tb.php/187-3b5cfec2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

プロフィール

奥貫阿Q

Author:奥貫阿Q
ツイッターで小説更新の宣伝、写真等の掲載も行っております。
(「奥貫阿Q」という名前でやっています。)

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (27)
日記 (0)
小説 (80)
小説設定 「Moon King」 (2)
「Moon King」改変後 (107)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。