2017-11

年明けの小説・「転生」(「Moon King」とは全く別の話です)

あけましておめでとうございます。
奥貫阿Qです。

こないだクリスマスが来たと思ったら、もう年明けましたね。
早いものです(汗)
私阿Qは、年末にかけて引っ越し、それが終わったら友人達と旅行と、珍しく移動の多い年末を過ごしました。
年明け直前まで入ってた露天風呂、気持ちよかったです(雪も舞ってました!)。

さて。遅い更新となってしまいましたが、新年のご挨拶がまだでしたね(汗)(汗)
今年初の小説を、挨拶の代わりに掲載いたします。
何とこれ、去年の12月31日に書いたものなんです。
年納めの小説を新年に発表というのもどうかと思いますが、もったいないので発表します(苦笑)
ギャグ調ですが、若干ホラー注意。

では、そろそろ今年初の小説をどうぞ!
今年も奥貫阿Qと、「Moon King」をよろしくお願いします!



転生

「だから俺の人生はこれでいいんだってば」
…どうしよう。
「お魚くわえたどら猫が追っかけられるのは、宿命なんだ。追うも追われるも手前勝手。自己責任の世界なんだよ」
だからって、これはまずいだろう。
「俺に関わらないのが、身のためさ。そこどきな」
それは無理だろ。
「…お前、春休みの間に何があった」
「何にもねぇよ。俺は俺の本当の生きる道を知っただけだ」
めでたいことだ。しかし、しかし、だ。
「よりによって、何でそれがお前の生きる道なんだよ!『商店街の魚屋を狙いまくる虎猫』だなんて、どうやって生活してくんだよ!」



現在、俺と、俺と同じゼミに通う根古は、大学前の商店街で、喧嘩の真っ最中だった。
喧嘩の理由は、「お互いの進路」。
俺は公務員を目指し、一年のころからコツコツと勉強してきた。この春休み、ようやく模試の結果が返ってきたばかりである。
しかし今俺にくってかかるこの友人、もとい根古は、一年から今まで、大学院に入るための準備を続けてきた。理由は、こいつの頬にある真円のシミ。これが恥ずかしくて、人と頻繁に会う機会がある企業やら役所やらには入りたくなかったという訳だ。理由が理由だが、その進路なら文句ない、と、俺は思っていた。だが、ゼミに入った去年、根古の実家が自己破産。車も何も残らず持っていかれ、根古の家は文無しだ。当然大学院進学の夢も断たれ、根古は俺と同じ就職組になったのだ。
…いや。なったはずだ。
「根古…お前自分の名字が『ねこ』って読みなだけで、何でこんな真似を。つうかそのタトゥーは何だ!?腕とか頬とか、シマウマっぽい線が描かれてるけど何なん!?そんなん面接どころか合同説明会すらアウトだろ!!」
「安心しろ。これはアクリル絵の具で描いたやつだから」
「わざわざ描いたの!?イッタイなぁ!!」
お前そういうキャラじゃなかったろ!?大学院目指してただけあって、真面目な学者然とした男だったろ!?
「お前…まさかアレか?お前の卒業論文のテーマ。確か、ええっと…」
「『江戸時代の化け猫』」
「そうそれ!もしかしてそのテーマのせい!?そのテーマで研究がはかどらなくって、馬鹿になっちゃった!?」
「馬鹿って何だよ!俺は至って本気なんだぞ!」
それが問題なんだって言ってんだよ!
本気で馬鹿だなこの馬鹿!!
「根古ぉ!お前一人っ子だろ!お前が本物の猫になっちゃったら、親御さんどうやって生活してくんだよ!」
「年金…は、あてになんないから、頼りにしちゃいない。でも、俺が今の生活を続けたらいいぞ。キャリアを積めば、魚どころか、蝶、蛙、鳥だって捕れんだぞ。そうすりゃ、我が家の食費はタダになるんだぞ」
「光熱費や水道代は!?それ以前に『蝶』て!食えんの!?蝶って食べれるの!?」
「無理なら蜻蛉でも可」
「どっちも食えねえよ!」
もしかしたら食えるかもしれないけどさ!
いや、それ以前に!それ以前に考えるべきことがあんだろ!
残念なことに、この男はそれに気付いていないらしい。誰もこの男に忠告できないなら、俺が言ってやる!
「お前が猫になったら、親御さん悲しむんじゃない?」
「大丈夫。もう説得済みだから」
「え………はぁ!?」
嘘だろ!?
「親も、俺の決意の固さを悟ってくれたようだ。『お前の好きなようにしろ』と、送り出してくれたよ。『この商店街は近々近くに建つショッピングモールに客とられるだろうから、せめて余所の商店街に移動して生きろ』、とまで忠告をくれてな…」
「ええぇ…」
何なんお前の両親。
何なん商店街の未来予想図。
お前の両親は自己破産したくせにとんでもなくキャパが広いし、商店街の未来予想図に至っては、はっきり言って悲惨だ。
駅前も含め、この辺には商業施設がない。だからこそ、やれシャッター通りだ何だと言われる、商店街不況の時代を、この商店街は生き残ってこれたのに。
「…ちなみに、ショッピングモールが建つ場所は?」
「駅前だ」
…うん。完敗だ。近いうちに、この商店街はまずいことになる。ここに店を構える、俺んちの八百屋も、これで終わりだぁ。アハハ…。
あ、俺らの騒ぎを聞きつけて、母ちゃんが店から顔出してる。でも、青い顔して店ン中へ引っ込んでったぞぉ。父ちゃん呼びに行っても、もう遅いよー…。
「…なぁ根古。俺ももう猫になりたい」
「お。賢明な判断だな。…でも、そう簡単にはなれないぞ?猫になる前提条件てのは、前世が猫だった奴かつ、その記憶が蘇った奴ってことだから。お前はその気配がないようだから、まあ来々世に期待だな」
「来々世…」
もうそれ、俺であって、俺でないじゃん。
手遅れじゃん。
まあ、全部根古の妄想なんだけどさ。
「あ。ごめん。ぼちぼち猫の集会が始まる時間帯になる。俺は新参者だから、正装に着替えて参加しなくちゃなんだよ。…全く。お前のせいで手ぶらで参加する羽目になっただろ。そこの魚屋の魚を持ってこうと思ってたのに」
いや、根古。それ窃盗だから。猫は刑事罰なんてないけど、自分を猫だと思ってる人間は刑事罰の対象になるんだからな?
そんなことも忘れたか?
「じゃ、またどこかで」
「ハイハイ。また明日、大学で」
すっかり馬鹿になった根古のことにかまってられないほど、俺は商店街の行く末に絶望していた。
根古の家のことなんて言えない。俺んちもまだ建て直しが終わった店のローンが三十年くらいある。払えなきゃ破産だ。
…根古の奴は、怖くはないのか。自分の進路が、人生設計がめちゃくちゃになるかもしれないという恐怖に、何も感じなかったというのか。
「…なぁ根古。お前はどうだった。自分の将来が変わって、怖くなかったか…」
そう言い、俺は後ろを振り返った。
だが、そこに根古はいない。いるのは、路地裏に入っていこうとする、虎猫一匹だけ。
「にゃあ」と一声、根古の代わりに俺に返事をするかのように、そいつは鳴いて、俺の目の前から去って行った。
その猫は、根古の頬にあったのと同じ、真円の模様がくっきりと浮かんでいた。
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