2017-09

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「Doll⑳」

「Doll⑳」
(byキリ)

「…そんな事、あっていいことなの?機械に生き物の命を任せるだなんて…」
「いいも何も、俺は出来てしまった。生まれてかれこれ、千年以上は経つんだぜ?今更そんな事聞くなよ…ほら、あいつを見てみな」

そう言われて、私はアイ兄さんの指差す方を見た。
…まずいことになってる。あっくん今、随分圧されてる。
ミーナはもう、さっきまでの多種多様な変身はしなくなり、あっくんに攻撃しやすい姿で戦っていた。
今のあっくんは、普段よりもとにかく力が強い、パワーキャラだ。
だけど、あくまで人間の姿がベースであるため、手足は二本ずつ。一回、殴る蹴る、物を投げる等の攻撃をしたら、どうしても次の攻撃までにブランクができてしまうのだ。視覚に関しても、正面のものを捉える際には好都合だが、横まではカバーできない。
つまり、力はあっても、視野が狭く、手数が少ないのが弱点だ。
ミーナはそれを察してか、まるでタコのように沢山の腕を出し、体中に目玉をつけて、攻防共々油断も死角もなくしていた。
さらに言えば、腕は硬い鱗のようなもので覆っている上、体は防弾ガラスのように、透明かつ硬い殻で隙間なく覆っている。あっくんの弱点を攻めるだけではなく、あっくんの持つ馬鹿力への対策もできていた。

「無駄なくそつなく、自分が与えられた仕事を行っている。あれがあいつの自然な姿なんだ。本人はどう思ってるか、分からんが」
「そんなこと!」

そう叫んだのは、私じゃない。アイ兄さんでもない
私達は二人して、突然の大声に、ビクッと肩を揺らした。

「そんな非人道的なこと、あっていい筈がない!メチャクチャだ!機械が人に成り代わり、人が人でなくなり、終いには、人の姿をした兵器が間引き行為をするだと!?もう終わった世ならまだしも、それが今なお許されるなんて、あっていいものか!おい機械!人間を馬鹿にするのも、大概にしろ!」

大声を出したのは、私じゃない。
あそこに転がっている、リヒトって男だ。
ミーナを掻っ攫ってきた張本人のくせに、今の今まで気絶しているとばかり思ってたよ。

「お前にだけは言われたくねえよ、リヒトさんとやら。今暴れ狂っているあの兵器女の体を乗っ取り、お前の妹の体にしようとしていたくせに。それまでは中途半端な技術で、勝手に妹の体を複製し、勝手に機械の体を作ったろ。…妹本人の意思も無視してさぁ」
「う…」

何てことだ。
ミーナ達のことに集中していて忘れかけていたけど、この人も相当デカいヤマを背負っていた人だった。
ここまでとは思わなかったけれど。
こいつは、ただの誘拐犯ってだけじゃなかった。ミーナを誘拐したのは、妹の体の代わりにするため?そして、自分の妹を、機械で複製したって!?

「正気じゃねえよ、あんた。いくら妹を亡くしたからって、そこまでするか?そりゃあ機械は『老い』のプログラムがない限り、いつまでたっても若いさ。『疲れる』とか『痛い』とかいう感覚も、プログラムされなきゃ存在しないものだ。体も量産できるから、死らしい死もない」

だが、と、兄さんは言う。

「お前、大事な大事な自分の妹を、わざわざ『もの』にしちゃったんだぜ?俺がさっき話したろう。必要とされなければ、消え去る存在なんだよ。お前らが兄弟喧嘩でもしてみろ。お前が、『お前の顔なんか見たくない。どっかいけ』とでも言った日にゃあ、妹はその日から、お前には見つけられない遠い遠い国で、ホームレス生活だ」
「…俺達は、兄弟喧嘩しないよ」
「『させねえ』、の間違いだろう?」
「違う!」

兄さんの言葉に、リヒトは寝転がったままの姿勢で、拳をドンと砂の上に叩き付けた。
凄い。あそこまで怒りに打ち震えた奴を見るのは、ハインリヒ以来だ。
拳はわなわなと小刻みに揺れているし、こめかみには、太い青筋が二本も入っている。顔は朱で塗ったかのように朱く、レンズがなくなった眼鏡の奥から見える瞳は、瞳孔が開きっぱなしだ。

「俺達は昔っから、一度も兄弟喧嘩なんてしなかった!だから今も、これからも、ミラとは兄弟喧嘩しない!昔から、俺とミラは仲がいいから!」

「だから、『兄弟喧嘩させない』んだろ?俺達は自分がどう思っていようと、プログラム通りにしか動けない。プログラムは、プログラムの作り主が思った通りに作り上げるものだから、当然、プログラム以外のことはできないんだ。兄弟喧嘩するにも、『兄弟喧嘩をしてもよい』って、プログラムを入れにゃあ…」
「俺は、ミラの精神をそのまま機械に転送させている!」
「でも見たところ、あの子の体を主として動かしてるのは、補修用の機械だったぜ?お前、どっかしら設定ミスってたんだよ。あれじゃあ動きも、満足いくほど滑らかじゃなかっただろ?」
「…何だって?」

そう言ってリヒトは、機械があったであろう場所を振り返った。
だけどそこには、あっくんやミーナが暴れまわったせいだろう。消し炭と化した、黒い塊しかない。

「セキュリティも甘過ぎ。俺らの装置の改造版を造ったのなら厳重なものをかけとかなきゃ。でなきゃ、情報筒抜けだぜ。現に俺は今、お前のご自慢の機械やら、お前がラボ内で喋っていたことを参考に、こうして話をしている訳だし」

黒い塊を見て呆然となっているリヒトに向かって、兄さんは止めとなるであろう言葉を放った。
リヒトは今、赤い顔から青い顔へと移り、泣きそうなくらいに顔を歪ませている。
その向こう側では、未だミーナと愛弟子が交戦中なのだが…。何を思っているのか。兄さんは白衣のポケットから煙草を取り出し、火をつけ、そのままスパスパと吸い始めた。

「…おいやめろ、機械。俺の絶望も、ミラのことも、果ては自分の仲間のことも無視して、ブレイクタイムか?冷血な奴だな」
「あ。これ、煙草じゃなくって、栄養の循環を助ける薬みたいなものね。人間で言えば」

そうなんだ。
このご時世に嗜好品たぁね…と思ってたけど、意味のあるものだったんだ。

「人間並みに頭も体も使った上、えらく緊張したりする時は、これ吸って気絶しないようにすんの」
「は…?緊張?お前らにとっちゃ大事件だったことが解決したんだぞ?今更何なんだ?」
「いやぁ、今からここで殺人事件が起きると思えばね」

…何だって?
殺人?

「一体、だれが殺されるんだ?」

「お前さんさね」

アイ兄さんは、煙が流れていく方を見つめながら、そう言った。

「…リヒト。忘れたのか?お前は妹に危害を加えた。お前の機械をハッキングした際気付いたことだが、お前も妹さんも、今や希少な純粋な人間だ。それに危害を加え、人間じゃないものに変えてしまった。…由々しきことだろ。社会的に、何らかの制裁を受けなきゃならん」

兄さんがそう言ったのと、ほぼ同時だった。
ドスン、と、何か重いものが砂に落ちる音と、重い機械を無理やり動かした時にしそうな、ギシギシという嫌な音が聞こえてきた。
まさか…。

「ミーナ!?あっくん!?」
「安心なさいな、キリちゃん。あっくんをよく見ろ、注射針みたいなものが刺さってんだろ。あれであっくんは今、眠らされてんのさ」

確かに、その通りのようだった。
よくよく見れば、あっくんには何か太いものが突き刺さっているし、あっくんの体からは、あの針による出血はない。体に害のなさそうなものだ。

「非常に残念だが、純粋なパワー勝負じゃ、まだあっくんのが強いらしいな。おまけに打たれ強いときてるから、苦肉の策として、麻酔弾を撃ったんだろ」

それも、捕獲用のをな、と、兄さんは苦笑しながら付け加えた。

「本当に実害のある麻酔弾もあるが、それを出す暇を惜しんだんだろうな。今は、こいつを殺すのが先だから」
「「何故!?」」

偶然にも、私はリヒトと同じタイミングで叫んだ。
だけど、私は叫んですぐに気が付いてしまった。
いや、思い出したと言った方がいいだろう。
ミーナが本来、生まれ持っている役目を!

「何故?そりゃあ…」

兄さんが煙草もどきを吸いながら、ミーナを指差す。
ミーナはもう、あっくんの方を向いちゃいない。
こっちを見ている。
あの子は顔も目も、どこにもないけど、強烈な視線を投げてきている。

「こいつは、悪い奴を間引くために生まれてきたからだ。やっちまいな、『M0.5』もとい、『M0.5D(エムハーフディー)』。久し振りの仕事だぜ」

兄さんが煙草を投げた途端、砂をまき散らせながら、ミーナが突進してきた。
もう人間の姿をしていないミーナは、今や車輪のような姿をしている。
軸の部分に球体を持つ、大きな車輪
…まるで、地球上に現れたブラックホールのようだった。

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