2017-09

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「Doll 21㉑」

「Doll 21㉑」
(byキリ)

「うわ…うわあああああああ!」

リヒトは悲鳴を上げて走り出した。
天井が崩落した時に怪我でもしたのか、足を引きずりながら必死に逃げる。
でも、ミーナの方が速い。何てったって車輪なのだ。速く走るための形態なのだから、瓦礫も、あっくんも弾き飛ばしてもなお、あっという間においつかれそうになる。
唯一助かる可能性を考えるとすると、

「あああああああ!…ん!?」

ミーナの体が大きすぎて、上手くコーナーリンクができないところだ。
何せ、今のミーナは、見たところ成人男性三人分ほどの直径がある。
こんなデカい車輪が自由に行き来できる空間なんて、そうそうない。
リヒトもそれに今気が付いたのだろう。自分を追っていたのに、壁のあたりでギッギッと立ち往生しているミーナを見てポカンとしている。

「何してんの!走って!!」

思いのほかにどんくさいリヒトを見て、私は思わず叫んでしまった。
それを聞いてか、あわあわとまた走り出すリヒトを、ようやく曲れたミーナが追尾する。

「…キリちゃん、あんたどっちの味方よ?」
「うるっさいね!変に中立な立場な兄さんより、分かりやすいでしょ!?」

私は怒鳴って、またミーナ達の方を向いた。
私はあくまで、ミーナやあっくんの味方だ。
今までは一応、彼らの年長者として接してきたと思う。…色々、頼りっぱなしになっちゃいるけれど。
でも、年上として、師として、彼らが必要以上に傷付かないよう配慮してきたつもりだ。
殺人や傷害なんて、もってのほか、と。
無駄に短気な、でも、私よりも進路が狭かった彼らにできる、数少ない配慮だ。
それを、それを!
あんたは!

「ようやく成人できた年に殺しだなんて、余計なもの背負わせないで!」

ミーナが再びコーナーリンクで手こずりそうになった瞬間、私は走り出した。
策なら、ないこともない!

「おいキリちゃん!」
「あんたは黙ってて!」

アイ兄さんを無視して、私は走る。
走る先には、さっき弾き飛ばされた衝撃で注射が抜けたあっくんがいる。
情けないけど、彼の力を借りなければ…!

「あっくん!起きて!」
「う…」

砂を巻き上げて、私はあっくんのところに滑り込んだ。
近くで見て気が付いたけど、あっくん、姿がどんどん元に戻り始めている。
麻酔のせいで、力が抜けたのか?

「キリさん…」
「…あぁ」

姿が完全に元に戻ると同時に、あっくんは目を覚ました。
どこかとろんとした口調だけど、意識は割とはっきりしてるみたい。

「…はは。僕、生きていますねぇ」
「あっくん、悪運は強いものね。…さてと。目が覚めたのなら仕事だよ。いつも通り、社畜精神全開で頑張ってくれたまい」
「あ゛?」

目が覚めて早々に仕事の話かよ、と言いたげな顔で、あっくんは睨んできた。
ちょっとちょっと。状況よく見てよ?ここ戦場だよ?いつもみたいに雑多な書類整理を押し付けるわけないじゃない…。

「僕の面にビビるくらいなら、一人でやれ!もう流石に、有給取るからな!?」
「そうつれないこと言わないでよ、あっくうううん!」



休む休むと騒ぐあっくん(連勤十四日目)を何とか立たせ、今の状況をよく見せてやった。

「え…。ミカ、未だに元に戻ってないんですか?」
「うん…。しかも、リヒトを殺そうとしてる」
「そんな無駄な…。あの男がやったことを考えれば、非現実的な部分を差し引いても、無期懲役は確実ですよ?別段殺さなくても…」
「う、うん…」

流石、荒んでるな、あっくんの奴…。
生きながら目と足を引っこ抜かれる国にいただけのことはあるよ…。

「ミカもその点を、よく分かっている筈なのに…」
「今のミーナは、理性で動いてるんじゃないんだよ。でも、我が強いミーナが、状況もわきまえず暴れまわるとも思えない。もしかしたら、どっかのタイミングで頭に血が上った瞬間に、血管っぽいものが切れて気絶して、そのまま機械の本能に体が乗っ取られちゃってるんじゃないかな」
「それ、脳出血とか脳内出血とかいうやつじゃないですか!?絶対安静しなきゃ死にますよ!?」
「そう。そして、ミーナの体が死んだ後、ますますまずいんだ」

恐らくこのままじゃ、ミーナは確実にリヒトを殺す。
そして、体がオシャカになったら、またどっかの装置でミーナの体は再生されるだろう。
その装置の在り処は、私は知らない。知っているとしたら、アイ兄さんくらいのものだ。
もし、アイ兄さんがミーナの本能を尊重して、ミーナを攫い、犯罪者のシンジケートを渡り歩くようなまねでもされたら…。もう、ミーナに平和な未来は来ない。

「だから、ここでミーナの暴走を食い止める」
「…そんなこと、できるんですか?」
「できるよ」

そう、多分できる。

「ミーナより力が強いことが分かった、君さえいればね!」
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