2017-11

「Doll」24話、25話

「Dol24」
(byキリ)

「ギョオー…」
「だっから、悪かったって。見殺しにしようとしてさ」
「キリさん。気持ちがこもってない謝罪ほど、嫌なものってありませんよ」
「…」

あっくんがうるさいけど、何にせよ、悪いことをしたら誤るというのが礼儀だ。
翼をちょっと出したら、あとは自力で脱出できたオオトリに向かって、私は詫びる。
まぁ、殺されかけたとあって、何となく、「ホントにぃ?ボクそれ信じてもいいわけ?」って顔してるけど。

「信じようが信じまいが、とりあえず納得してよ。あんたって、生きてる限りは役に立つし。これからも利用できるし」
「ちょっと。この期に及んで吹っ切れて、『利用する』発言はマズイでしょ」
「あっくん、シャラップ」

心なしか、オオトリもウルウルしてるようだけど、知ったこっちゃない。
本当は、こいつを慰める時間さえ惜しいくらいなんだ。

「それよかさ、あっくん。オオトリを慰める役代わってくんない?私、ミーナ探してくる」
「やですよ。そもそもこれ、元々力づくな作戦なんでしょ?僕が行くのが筋です」
「それこそやだイ。オオトリ、ねちっこいくらい立ち直りおっせーんだもん。もうめんどくせぇ。ミーナ探す方が楽」
「ウワ。また嫌な本音出したよ」

大袈裟に嫌な顔を作ったあっくんが、これまた大袈裟に私から引く姿勢を取った。
こいつはこいつでねちっこいよな、とは思うが、それは置いといて。

「とにかく代わって」
「やです」
「代われ」
「やです」
「師匠命令」
「どの面下げて…」
「この面だよ!」
「あのぉ…」
「「あン?」」

また弟子に手が出かけた時、あっくんでも私でもない声が割り込んできやがった。
どこのどいつだ、と、きょろきょろすれば、私達のすぐ横に、陰気なメガネ。ただし、アイ兄さん以外の。

「うげ。リヒト」
「生きてたのか、テメェ」

言い争いは一時休戦。小生意気な弟子とタッグを組んで睨んでやるが、奴は何故か逃げない。
助かったんなら、もう帰れよ。家壊れたけど。壊したの私らの仲間だけど。

「お二人とも、M0.5(エムハーフ)は何処に…?」
「んなもん知らんし。私らも探しに行くとこだよ」
「僕らはともかく、お前は探したところでどうこう出来ねぇだろが。邪魔だからどっかいけ」

あっくんがシッシッと手を振っても、奴はなかなか出ていこうとしない。
何か言いたげに、こっちを見てる。

「あ。まだこいつ諦めきれねぇって顔してる。あっくん、上の穴まで放り投げちゃって」
「ラジャ」
「ま、待って!待ってくれ!」

あっくんが手を伸ばしかけた途端、奴は両手を前に出し、ストップをかけてきた。

「諦めきれるわけがない!あいつがいなけりゃ、妹は一生不自由な体なんだ!」
「まだ言ってるよ、この阿呆は」
「何度だって言う!!」

私達が呆れたかおになってるのにも関わらず、この男は全然引き下がらない。
それどころか、頼んでもいないのに、過去の話をしだした。

「あの子は元々体が弱かった。その上、どういう訳か…ある日突然、妙なものが視界に写ると言い出したんだ。風もないのに勝手に動く水やら、空飛ぶ銀色の鳥やら…。それらは全部幻だと言い聞かせたが、妹は納得しないまま、衰弱していったよ」
「ん。で?」
「妹が見ているものが、俺が発見した人工的な生物の仲間だって分かったのは、彼女が弱り切ったころだった。幸い、その頃には、妹を機械化する準備は整ってたから、こうして不完全だけれども健康な体を与えることもできた。今に至っては、妹の生きてる片目を使って、以前から調べてたM0.5を手に入れることもできた。…あと、少しなんだよ。M0.5さえいれば、妹は完璧に健康な体になる。M0.5をおびき寄せるため、幻を見る目だけは生身のものだけど、完璧な体さえできれば、その目さえいらなくなる。俺は何としてでも、妹を健康な体にし、普通の人間には見えないものにもおびえる必要がない、『普通』の生活を送らせてやりたいんだよ!今まで不自由だった分な!」
「…驚いたね」
「ええ。驚きです」

こいつの独白を聞く限り、マッドサイエンティストを気取ってる割には、案外普通な男だった。
発想は色々ヤバいし、ミーナを渡す気なんてさらさらないけど、その本質は、妹を気遣う、兄のソレだ。

「だから、M0.5をくれ。あいつはただのモノだし、今まで好き勝手やってきたんだろ?」
「それは無理。私らにとっちゃミーナは仲間だし、友人だ。それに、『好き勝手』とは程遠い世界で、今まで生きてきた。…どうしても欲しけりゃ、ミーナを正気に戻したうえで、直談判するんだね」
「え…」

そこまで言うと、リヒトの顔は青ざめた。正気の時のミーナに、すでにやられた後だったようだ。
ミーナ、言えば分かってくれる、いい奴なんだけどなぁ。体をくれるかどうかは別として。

「あ、キリさん」
「何さ。あっくん」
「上、見てください」
「はぁ?」

あっくんに言われて、上を見た。
…うん。何ていうか…。どういう状況なんだろう。
私達はさっきまで、確かに、上に何もない状態で話をしていたはず。天気は晴れ。ちょうど良い明るさだ。
それがどうだ。今、私達の「真上」に雲がわき、雲の隙間から燦々と、快晴の空に負けないほどの光が降り注いでいる。
繰り返して言う。雲がわいてきたのは「空」ではなく、私達の「真上」。
つまり、地上にぽっかり空い穴を雲が多い尽くし、地価の部屋に光をこぼしているのだ。
光源は、太陽ではない何か。大体の予想はつくけれども。

「…いましたねぇ」
「…うん」

まさに、人を断罪するために降りてきた、天使。
それを描いた宗教画のような風景ができあがっていた。




「Doll25」
(byキリ)

「ハハ…参ったねえ、リヒト。直談判どころじゃあないや」

残念なことに、断罪されるのはリヒトだけじゃない。ここにいる限り、私達もやられてしまうことだろう。
最早、乾いた笑いしか出なかった。

「キリさん。口元と同時に膝も笑わせるなんて、器用ですね」
「…そう言うあっくんは、どうとも思わないの」
「何かもう、さっきから信じられないことばっか起こってるので。逆に肝が据わりましたよ」
「そう…」

すげぇ。何かしらんが、弟子がすげぇ。
もうあんた、度胸の面では免許皆伝だよ。

「弟子がそうなら、師匠である私も肝を据えなきゃあね」
「据わってなかったんですか?ここまで来たのに?」
「ンぐ…ッ!」

どこまでいっても弟子が生意気だ!
てゆうか、恋をして強くなったよな、お前!
…って、言いたいけど、そういう場合じゃないよな。ここは。

「…まあ、それはそれとして。今はさっさと、ミーナをどうにかしようや」
「ですねぇ」

私と弟子。二人して偽物の雲と、偽物の光を睨みつけた。
あの雲の向こう。いったいどんな姿が潜んでるんだか知らないが、雲と、強めの光を姿を隠してるってことは…。

「恐らく、どうしても目くらまししたいんですかね」
「多分。今のミーナ、本体自体はガードが弱いのかも」

なら、車輪の時よか倒しやすいかもしれない。
光による目くらましと、熱さ対策さえできれば。



(byシンタ)

「うわぁおッ!?」

何すか!何すか!?と叫ぶ間もなく、ミラちゃんの家があったところから、モクモクと雲が湧きだしてきた!
どうも家の跡地に穴があるらしい、というのが分かる距離にきたってぇのに、まさかの事態だ!

「臭いは…ないっすねェ。無臭っす。見た感じ、まんま雲だ。雲自体に害はなさそうっすね」
「でも油断はできないね…」
「穴に飛び込むのを迷う時間もなさそうっすよ…」

何たって、さっきからこの雲、ビカビカ光ってるし。
まさかとは思うけど、この下で雷でも落ちてるんじゃないかと思う。

「色々、ヤバくないっすか…?」
「…確かに」
「…こりゃあもう、腹を決めるしかないっす…」

最悪、雷に感電して死ぬか、落ちて骨を折って死ぬかしかないような気もする。
だけど、この下には、愛しい愛しい元上司が。
そして、腕の中にいる可愛い可愛い女の子のお兄さんもいる。

「…飛びましょう。最悪俺が死んだら、後は任せるっす」
「え…一人でできるかなぁ…」
「なぁに。こんだけの騒ぎになってんだから、きっと中にはすでに、自警団の皆さんもいるはずっす。あなたは一人じゃない。すでに味方がスタンバッてる状態っすよ!」

にっ、と俺が笑ってみせると、ようやくミラちゃんが笑ってくれた。

「んじゃ、行きます。大きくジャンプするんで、しっかり捕まって!」
「はい!」

待っててください、准尉殿!俺が今行きます!
愛しい愛しい、尊敬できる元上司に心の中で呼びかけながら、俺は飛んだ!



(byキリ)

「ここへきて、このたっくさんの粉塵が役立ちそうだねぇ、弟子」
「そうですね。…でも、どうやって使います?」
「これだよ」

未だに宙をにらむ弟子に、私は、その辺に転がっていた鉄製の棒を差し出した。

「こいつをぶん回して、ちょっと竜巻作ってよ」
「…へ?」

へ?じゃない。やるったらやるんだよ。

「がんば」
「へ?」
「超がんば」
「へぇ?」
「だから、超がんば、だよ。やるの。レッツ」
「馬鹿抜かせ!」

ゴスッ!と頭に衝撃が走った。
痛い、超痛い!目の前に、ベガ・アルタイル・デネブが!!

「三つそろえて、夏の大三角形ですか!この馬鹿!」
「誰が馬鹿だ…って、あだっ!ちょっと!竜巻作るにしても、何で何度も私の頭に鉄棒ぶつけんの!」
「作らねーよ!この腕じゃ、そもそも作れねーよ!できたとしても綿菓子くれぇしか作れねーよ!」
「イタイ!イタイ!」

このクソ弟子、いよいよ師匠に手ぇ上げることにためらいがなくなったなぁ。
…と、状況に関係なく、しょんぼりしてしまう。
こんなこと思うだなんて、私もだいぶ、肝が据わったもんだ。

「いいですか!?そもそも長さだって足りませんよ!こういうのはねぇ!」
「え。弟子、何すんの!?」
「せいぜい槍投げにしか使えませんよ!ほらッ!」
「ああッ!馬鹿!馬鹿!!」

あの雲の中には、ミーナがいるのに!
悲しいかな。このクソ弟子、落ち着いているように見えて、全く落ち着きを失くしてしまっていたらしい。
自分が惚れた女(メカだけど)がいる場所に向かって、ブンッ!と勢いよく鉄棒を投げ飛ばしてしまったのだ!

「馬鹿!アヤト、なんてことを!」
「え…?ああッ!しまった!」

本人がようやく我に返るも、時すでに遅し。
この筋肉弟子が投げた鉄棒はどんどん飛んでいき、あっという間に雲の中へと消えてしまった。
すると。

「………え、何?」
「……何でしょう?」

活字にすらできない、不気味な声。
強いて言えば、機会の軋むような音に、動物の咆哮と女の悲鳴の中間のような声を合わせたような声が、人口の雲から降ってきた。
それは、地価の穴の中いっぱいに響いてからおさまったが。

「…あ」

今度は、雲の中から何かが降ってきた。
敢えて「何」とは言いたくない。
赤くてべっとりしている、ミーナにとっては馴染んでいるであろうもの。

「…雨、じゃないですよねぇ…」
「そんなわけないでしょ…」

ボタボタ、と、重みのある滴の音を聞きながら、私と、アヤトから、この滴と同じ色のものがサァッと引いて行った。

「どうしよう…。ミーナ殺しちゃったじゃない……」
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ti2958.blog.fc2.com/tb.php/213-e7101699
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

プロフィール

奥貫阿Q

Author:奥貫阿Q
ツイッターで小説更新の宣伝、写真等の掲載も行っております。
(「奥貫阿Q」という名前でやっています。)

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (28)
日記 (0)
小説 (80)
小説設定 「Moon King」 (2)
「Moon King」改変後 (109)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR