2017-09

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

大原くん×2話 (その2)

【サッカー部員とマネージャー】 前編

○×市立A中学。
この中学には、他の中学ではあまり見かけない部活、「女子サッカー部」がある。
生徒数も確保でき、ジュニアのサッカーチームがあるこの市だからこそ誕生した部活といえるだろう。
 けれども、いくら人数が確保できる部活といえど、人が足りなくなることはあるわけで。
 ましてや、インフルエンザが大流行し、学級閉鎖になるクラスが出てきた以上、練習するための人数すら激減するわけで。
 要は、部活として活動していく以上、最低限の練習だけでもできそうなメンツを揃える必要があるってのが、ここ最近、一番の悩みの種だったらしい。
 「それにしても、なりふり構わな過ぎじゃねえ?」
 先程与えられたユニフォームに目を落とし、「僕」は盛大にため息をついた。

 「ちょっとあんた、面貸してよ」
 遡ること、約30分前。下校のための支度をしてたら、女子サッカー部の部長(注:大女)に呼び止められた。
 「…何?まさか、僕のデスマスクでも作るっての?」
 「あんたがお望みなら、それでもいいけどさぁ」
 チビな僕に対して、態度も図体も大柄(おおへい)なこの女は、やたら偉そうに、自分の部活のことを話し始めた。
 それが、部活のメンツが足りないって話。
 「ふーん。そんで?」
 「あんた、鈍いね」
 あんたチビだし細いし、ウチの部員の練習相手になってよ。ユニフォーム貸すから。
 「………は?」
その間、たっぷり10秒間。地球上の時間が止まったんじゃないかってくらい、全てが静止していたように感じた。
 「はいこれ。あんたのユニフォーム。40分後にはグランドに来ててね」
 じゃ、と、一方的に言うこと言って、立ち去っていく大女。そして、僕の手の中には押し付けられたユニフォーム。
 え、信じらんない。着るの?これ着るの?
 コスモスみてぇなピンク色なんだけど、これ。
 「ええええ…」
 のっしのっしと肩で風を切る大女の後ろ姿に、何も返せる言葉がなかった。
 いや、返せるだけの心的余裕がなかった、というべきか。
 とにかく、僕は一瞬のすきに畳み掛けられて、強制的に女子サッカー部の練習相手に駆り出されることになってしまったのである。

 「うわぁ、ユニフォーム余裕あり過ぎ」
 とにかく、受けちまったもんは受けちまったもんである。
 借りたもんを、取り敢えず着た。
 んで、着たらめっちゃでかかった。サイズが。
 「動きにくそうだなぁ」
 今更言うが、僕は女じゃない。男だ。なのに、このサイズの違いとは何なのか。
 「男女差」って言葉の意味を、いっぺん辞書で調べてみたくなる程の違いを感じる。
 「悲しくなるわぁ…」
 着替えた場所が、無人の教室でよかったと、本気で思う。
 だが、有人の教室で着替えることになったとしても、このサイズである。「実はこれ、男物だから」と言い張っても、全然それで通せそうだけれど。
 「あーあ、やなこと引き受けてしまった気がする…」
 今更だけれども。
 でも、僕が断ったとしても、きっと僕みたく気が弱そうで、見た目も弱そうな奴にお声がかかるのは間違いない。
 遅かれ早かれ、こういう事態になるのは避けられないことだろう。
 そんでもって、本当の本当に弱けりゃ、女子のユニフォームにあーだこーだ言われ、部員にボコにされて仕舞いだ。
 「…」
 うん。結局僕が防波堤になるより、他はない気がする。
 自意識過剰かもしれないけど、多分そうだ。
 「…まぁ、普通にスポーツする機会だと思えば、いいか」
 要は、堂々としていりゃいい話なのである。
 服は服だ。小説とかなんて、いちいち「○○は××を着ている~」なんて書いてなきゃ服を着てるかどうかすら分からないのに、登場人物はみんな堂々としてるじゃないか。
 僕だって堂々としてりゃいいんだ。恥ずかしいけど。
 僕以外、今の女子サッカー部にいるのは、全員女だから、さらし者になること以外考えられないけど。
 そんな重い気持ちを胸に、僕はグラウンドへ急いだ。

 「…」
 「…」
 「…」
 やや遅れてグラウンドに到着すると、女子サッカー部員が全員固まっていた。しかも、視線は全員一直線。揃って同じものを見ていた。
 一体何だ?と思って、彼女らの視線をたどると。
 「…というわけで、みなさん初めまして!お…私が、この部の臨時的コーチ兼マネージャーでっす!どうぞよろしく!」
 でけぇ。声だけじゃなくて、図体も。
 そこにいたのは、一応は女のナリをした……こう…「何か」だ。
 がっつりメイクをしてるものの、声は男だし、身長は2メートル近く(或いは2メートル越え?)あるし、何より、「お…」と言いかけた言葉が気になる。
 多分、十中八九「俺」だ。「俺」って言おうとしたんだ、コイツ。
 男以外の何者でもねーじゃねーか、コイツ。
 ご丁寧にスカートやらツインテールやらで武装してるが、九分九厘男じゃねーか、間違いなく。
 「ややっ!そこにいるのは新人さんだね!怖がらなくてもいいよー!先輩たちみんな優しいから!」
 僕を見つけた「何か」が「ねっ!」と部員共に呼びかけると、みんなコクコクと無言で首を縦に振った。
 あーあ、可哀想に…みんな怯えてるよ。大女まで。
 というか、この「何か」がデカ過ぎて、大女がただの小娘に見えてきたわ。
 「おいでおいで!」
 「…へーい」
 「返事は『ハイ』だよっ!ね!みんな!」
 「「「ハイッ!!」」」
 一糸乱れぬ、素晴らしいお返事が聞こえた。
 流石体育会系。お行儀のいいことで。
 「早速練習するよー!…と言いたいところだけど、残念!今日は5名インフルで休んだ子がいるから、部活はお休み!みんな気を付けて帰ってね!」
 「「「ハイッ!」」」
 「へーい」
 「返事は『ハイ』だよー!」
 御機嫌よう!と「何か」が最後を締めると、大女以下部員全員が「御機嫌よう!!」と返事を返した。
 鸚鵡(おうむ)かよ。
 「あ、新人さんも!来てくれたとこ悪いけど、今日は解散だよ!」
 「へーい」
 「『ハイ』だよっ!」
「…はーい」
 取り敢えず、もう帰っても大丈夫らしかった。
 よかった。これでダボついたユニフォームから解放される。
 「…あ、いけね!ちょっと待って!新人さん!」
 「へ?」

 「…帰っていいって言ってたのに…」
 「ごめんねー!」
 「『ごめんなさい』でしょ」
 「ごめんなさいねー!」
 自称コーチ兼マネージャーに呼び止められてすぐ、僕は部室に引っ立てられた。
 訊いてみたら、部員の洗濯物が溜まっているから、干すのを手伝ってほしいとのことだった。
「インフルで他のマネージャーがダウンしてたり、練習試合があったりで、全然洗う余裕がなかったんだって!」
「はぁ」
だからと言って、何故野郎二人に洗わせるのか。大女はもちろん、他の部員の考えることも大概だ。
「ホントはね、明日洗うから大丈夫って言われてたんだけど!明後日って雨じゃん!?今日しか洗うタイミングがなさげだったから、無理やり引きうけちゃった!」
「はぁ」
無理やり引き受けたんかい。
女子共嫌な顔しなかったのか?
「すっげえ顔しかめられたけど!」
「…」
「そんなに遠慮しなくてもいいよって言ったら、諦めてくれた!」
「…」
「マネージャーらしい仕事があってよかったー!」
…いや。いやいやいや。
「…大の男が、女子中学生のユニフォーム洗うってのは、どうかと思いますけど」
「え!?相手がどんなにゴツくても!?」
「ダメです」
「お…私が女の格好して、歩み寄っても!?」
「寄りきれてないです」
「マジかー!!」
やっちゃったー!と、ひときわでかい声で叫ぶ男(確定)に、もはや入れられそうなフォローはない。
てゆうか、歩み寄ったつもりかよ。
「どうしよ!?お…私、首が飛ぶかな!?」
「部室の裏に干しして見つからないようにすれば、薄皮一枚は繋がりますよ」
「それでもほぼ切られてる!!」
ヤバい!と、またデカい声で叫ぶ男だが、やってしまったものは仕方がない。
二度とやらないように注意してもらうしかない。
「ほら、もう干し終わったので、さっさと退散しましょう。ええと…」
「大原でっす!」
「大原先生。今見つかったら割とマジでまずいですよ。ほら、あのポスター見てください」
「へ!?」
僕が指差したのは、フェンス越しに見える掲示板だ。
「最近、女子中学生の洗濯物が盗まれる事件が多発してるそうです」
因みに、ポスターに書かれている犯人の特徴は、ある一点が、大原先生にピタリと当てはまる。
【身長二メートル前後の男】
「…俺、積んだかな…」
今日聞いた中で一番小さな声で、大原先生が呟いた。
「今すぐ職員室に戻れば大丈夫なんじゃないですか?」
「そうか。ならよかった…」
そこまで言った時、大原先生が顔を引きつらせて、固まった。
何だ急に、と思った時。ピンクと肌色のツートンカラーの風が、僕らの目の前を横切った。
おかしいな、あの風。すね毛が生えているように見えたけど。
「…た」
「ん?」
「大変だッ!!」
大原先生はそう言うと、フェンスをぶち抜いて走り出した。
先生の進行方向には僕がいたため、僕も大原先生にへばりつく形で移動する。否、させられる。
背骨がいてぇ、とか、あ、車追い抜いた、とか思うのも束の間。どんどん景色は後ろへ後ろへ流れ、見えなくなる。
でも、暫く移動していくと、ようやく目が速さに追いついた。
風圧に耐えながら目を凝らしてみると、大原先生の進む方向に、何かがいるのが分かった。
「…うん?」
車だ。それも、市内では当たり前に見かける軽自動車。
その中に、ピンク色のユニフォームに埋もれた、多分大原先生と同じくらいの背の高さの人が乗っていた。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ti2958.blog.fc2.com/tb.php/218-e4611d65
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

プロフィール

奥貫阿Q

Author:奥貫阿Q
ツイッターで小説更新の宣伝、写真等の掲載も行っております。
(「奥貫阿Q」という名前でやっています。)

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (27)
日記 (0)
小説 (80)
小説設定 「Moon King」 (2)
「Moon King」改変後 (107)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。