2017-09

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Doll28話

こんにちは(或いはこんばんは)。
奥貫阿Qです。

この間の更新から間をおいて、28話を更新できました。
リヒトさんの心情云々のほか、何故だか健康面の話まで出てきてしまっておりますが(汗)

次の29話では、今回出せなかったミラちゃんや、あっくんが出てきます。
最終話まであと少し!



「Doll28」
(byキリ)

「…そんな馬鹿な話があるか!」
「あったんだよ。お前が生まれる以前に」

…うん。ミーナやアイ兄さんみたいな連中が生み出されるんだから、機械化する人間がいてもおかしくないだろう。
それで文明滅亡かぁ。
…って。
ちょっと待ってほしい。

「ミーナ、また訊きたいんだけど」
「何だ。さっきからチョイチョイ割って入って来て」
「気になるんだからしょうがないでしょうが。…ねえ、その人、生身だった体を機械化したってことでしょ?だったら、サイ…何とかって呼ばれるんじゃないの?うまく言えないけど、ロボットみたいな扱いにはならないんじゃ?」
「ああ、そのこと」

それもそうだなって顔をして、ミーナは付け加えた。

「キリが言ってるのは、『サイボーグ』のことだろ。サイボーグ化なら、体のどこかしらに生身の部分があるから」
「そう、それ」

そうそう、サイボーグ。SFものの漫画とかで見たわ。

「でもその人は、生身の部分は残さず、全部を機械化してしまったんだ。一応3Dプリンターで臓器から何から何までをコピーして、ナノマシンで代謝もできるようにしてたから、限りなく人間に近い機械ではあったけど」
「え…脳とかも?」
「そう」

一体、何を思ってそんなことをしたんだろう、その人。
何か尋常じゃない理由があったんだろうけど、ミーナの話だけ聞くと、何とも変な奴だなぁって感想しか浮かばない。

「その人、家族のために人の倍以上は働かなきゃいけないのに、無茶をして体を壊してしまったらしいんだ。だから自分ができうる最高の技術で、もう一度働けるようにしたかったらしい」
「ああ…成る程」

そりゃ理由が理由だもの。ベストを尽くそうとしたに違いない。
でも、その後の結末がこれじゃあ…。報われなかったんだな。

「そういう意味では、俺だって同じだ。妹を救うために、やむなく…」
「でも不完全なできだったんだろ。失敗したって思うなら、手を引け。今のままならともかく、無茶な改造でバグでも起きてみろ。泣くのは妹さんなんだぞ」
「うるさい!」

ミーナが話をしても、止まる気はないらしい。
拳を振り上げ、そのまま、

「あああああああ!」
「え?」

突っ込んできて、ミーナに振りかぶった。
当たり前だけど、戦い専門のつくりになってるらしいミーナには通じない。
受け止められてしまった。

「…何のまねだ。ふざけてるのか?」
「ふ、ふざけていない!」

リヒトはまた顔を真っ赤にして叫んだ。

「俺の持てる技術は全て見せつけた!俺のオリジナルは、これだけだ!」



「…本当なのか?」
「ああ!本当だとも!お前さっきの話してて、俺が肝心なことを知らないって、理解できただろ!このラボ見て、殆ど昔の技術のコピーだって、気付いただろ!」
「…それにしては、色々と弱いな」
「そうだよ!だってこれ以上のものは、俺には造れなかったんだから!」

顔を真っ赤にしたままリヒトは叫んでいた。
ラボ中にわんわんと声を響かせて、それで。

「…泣くことないだろ。もっと金を稼げば、いい設備くらい」
「金のあるなしじゃない!思いつかないんだ!どうすればもっといい設備になるのか!どうすればいい設備になって、過去の技術が復元できるのか!」
「…」
「あ!また馬鹿だって思ったろ!そうだよ!昔あった技術のちゃんとしたコピーすら作れない馬鹿だよ!俺は!今まで気付かなかったけど!」
「…」
「一部の知識を理解して、ちゃちな模造品造って、それすらできない奴らより差をつけたつもりでいた!何でもできるって、思ってた!でも違った!さっきの黒髪やら、お前やら、先人の技術は想像を絶していた!思っていた以上に性能が良過ぎたんだよ!こんなの理解して、俺に同じの造れってか!?無理だわ!今の人間よか知識がある機械に追いつくなんて!」
「…」
「…俺、もっと頭がよかったらいいのになぁ」
「…」
「家族一人救えない兄だなんて…無力だ」

そこまで言うと、リヒトは膝から崩れ落ちていった。
もう、私も割り込むつもりはない。
だって、そういう気持ちなら、私にも理解できるから。
今はもう形がない工芸品を、私のじいちゃんや師匠は、たやすく造っているように見えていた。でも、私が見てない…見てないと思ってるところで造った物を壊している。
むしろ、造って世に出すより、壊す頻度の方が、はるかに高かった。
「どう造っても、あの形にはらない」
「どうしたらあんなものが造れたのか、先人たちの頭の中が分からない」
そう言っては、悔しさで泣いていた。
リヒトはじいちゃん達であり、じいちゃん達はリヒトだった。
でも、リヒトは自分の無力さを知るのが、少し遅かった。
それだけのことで、こんな騒ぎになってしまった。

「そんなこと言ったら…。私だって無力だろ、リヒト」
「…は?」
ミーナの、あんまり相手の心を読んでない言葉に、リヒトの表情が無になった。
…言いたいことは、察しが付くけれど。

「この二十年。私は自分が人間だと思って、危険な生物やら生物兵器やら軍の内部やらとやりあってきた。でも、見ての通り人の悲しみやら怒りには鈍感で。無駄な怒りやら攻撃を食らっては、怪我してた」

…自覚、あったのか。鈍感だって。
いや、ミーナの場合天然や我の強さも入ってるから、余計にたちが悪いな。

「あんまり理解できないんだよ。人を恐怖に陥れる感情とかが。明らかに人を害する行為なら、その後の展開も読めるから、多少は自分の中に怒りや不快感を感じらるけれど。…でも、それも人と比べると随分と希薄だ。人と一緒に暮らしてきて、それが痛いほど分かった」

強さはあるけど、それ以外はポンコツだろ、と、ミーナは言う。

「…なあ、そんなに泣くなよ。理解できない分野なら誰にだってあるんだから。できないってことがわかっただけでも、良しとしろ」
「…でも俺、もっと頭良くなりたい…。妹を、健康な体にしてやりたい…」
「じゃあ理解できるまで努力しろ。どうにも理解が無理そうなら、方法を変えるってのも手だ。要は妹が健康な体になればいいんだろ?現在の医療を知った上でその医療を使ってやってみるとか」
「時間がないんだよ!」
「でもやるしかないだろう!腹くくれ!」

ミーナが一喝すると、リヒトは再び静かになった。
…ミーナの大声、久々に聞いた。耳が慣れない。痛い。

「…お前に足りないのは、多分、頭の良さじゃない。自分の頭の限界を超える、覚悟だな」
「…かくご」
「ああ。するのは一瞬。でも、するまでが長い、あの覚悟さ。それさえできれば、あとは四の五の言わず、行動するだけなんだけどなぁ」
「…」
「それじゃあダメなのか?何もできずに今のままでいるよりかは、多少は活路がありそうだが」
「…ミーナ、その人軍人じゃないんだからさ。軍医だったんだからさ。精神論とかそういうの、苦手そうだけど」

軍医とか以前に、「気合いれろ!」って考え方自体が苦手そうな人のような気もするけど。

「でも私、これ以上は何も言えないけど。二十年間生きてて、一番自分が強くなるうえで効果的だったんだけど」
「うーん…。そうかぁ」

もっとも、私がミーナと同じ立場でも、多分ミーナとおんなじことを言うだろう。
ユバナ軍に入った時然り、弟子を救おうとした時然り。
覚悟以外、特に何もしてない。努力はそこそこしたつもりだけど。

「…」
「リヒト、多分今お前、必死になり過ぎて疲れてるんだよ。少し休め。健康的に寝て食って体動かしたら、案外ポジティブになれるもんだ。主に自律神経の改善で」
「そういうもんなの?」
「自律神経の乱れを馬鹿にするな。冷え症やら貧血やらイライラやら、乱したら最後、本当にひどいんだからな」

キリだって、他人事じゃない生活送ってるだろ。
そう言われ、ちょっとギクってなった。多分、顔にも思いっきり出ていることだろう。

「話はずれたが…。要は、無茶をして、無理をして、そこから出発する覚悟決めろってこと。妹さんなおすのに自分が参ってちゃ、元も子もないだろ」
「…うん」

おそらく、色々言われ過ぎて、くたびれてしまったに違いない。
挙句の果てには自律神経の話である。
流石はアイ兄さんの助手っぽいことをやってきた奴というか…。いきなり健康についての話になるとは。
このくたびれたマッドサイエンティストと生活習慣の改善がどう結びつくのか、あまり想像できない話だわ。


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