2017-11

魔人記 第十一話(最終回+おまけ)

蛭もどきの数倍のスピードで、オオトリは空を駆ける。初めて魔人の住処…もといアイのラボを訪れた時は、蛭もどきに視界を遮られ、殆ど風景を見ることはできなかったミハエルだが、オオトリに掴まれている今は、眼下に広がる森林、山脈、所々に点在する集落を眺めることができた。彼女は若すぎるともいえる年齢で戦い、そして、人々のささやかな幸せを奪って生きてきた男を倒したのだ。大仕事を見事終えた彼女の目には、この集落の家一つ一つが、自分が守り抜いた子供達が幸せに暮らす平和の象徴に…見えてなどいなかった。いや、そもそも何かを考えられる状況ですらなかった。何故なら、無事仕事を終えた彼女の頭の中には、たった一つの事しか頭になかったからである。
「さ…寒い…!」
そう。先ほども言ったように、「蛭もどきの数倍のスピードで、オオトリは空を駆ける」のだ。ということは必然的に、蛭もどきに乗っていた時以上の風が、彼女に襲いかかっているという状況になる。風圧も結構なものだが、何より彼女の身に応えていたのは寒さだ。オオトリは、ミハエルの視点について、この小説にて「眼下に広がる森林、山脈、所々に点在する集落」という表現をしなければならない程、高いところを飛んでいるのである。その高度プラス、スピードにより、今や吹きつける風は、徐々に彼女の体温を奪う死神と化していた。しかも今回は、寒さから身を守ってくれるものは何もなく、吹きっ晒しの状態だ。あまりの寒さのせいで、もはや痛みすら感じていない。
「アイ…いい加減中に入れてくれないと、私死ぬんだけど…。」
『心配すんな。もうすぐでラボだ。』
一体、さっきから何度この答えを彼女は聞いたのだろうか。もうすぐ、とか言いつつ、肝心のラボがある山は、まだ全然見えてこない。
「嘘をつけ…。ラボなんて、見えてないじゃないか…!」
『そう言われてもねえ。この機体、一人乗り用の機体なんだよね。』
「何で二人用じゃないんだ…?」
『動かせるんがこれしかなくてなあ。誰かさんが乗り物一つ盗んだおかげで。』
「くっ…!」
どうやらアイには、ミハエルを機内に入れるきは、微塵もないらしい。ミハエルは何とか死ぬまいと、イライラするのは百も承知で、積極的にアイに話しかけるように努めた。でなきゃ、寒すぎて意識が飛びそうだったのだ。それに、怒りを熱エネルギーに変えることで、体温を守れるかもしれない、ということも考えられる。
『あ。ラボに着くぜ』
「今度こそ、ホントだろーな…⁉」
『ん。マジ。前見てみ。』
アイに促されて見てみると、成る程、確かにアイのラボがある山だった。元々は軍に、先程までは自警団に所属していた彼女は、万が一の際、その土地の地形だけは覚えるようにしていた。故に、すぐにアイの言葉は嘘ではないことが分かったのだ。
しかし、ラボに着くまでが踏ん張りどころなのである。彼女は、喜んで声を上げ、うっかり深く息を吸わないように、下っ腹に力を込めた(寒さで喉を痛めてしまうことを心配したからだ)。そして、ボソリと呟く。
「…生きてラボに着いたら、ただじゃおかねえ…。色々とな。」
『んん?』
ミハエルの返事が聞こえたのか聞こえなかったのか。アイは曖昧な返事をし、ラボの中に入って行った。殆ど凍死しかけのミハエルと共に。

                 ◆

「アイッ!いくらなんでも吹きっ晒しの状態で運ばなくても良かったんじゃないか⁉おまけに縄だって掛けられっぱなしだったし‼」
「まあまあ嬢ちゃん、万事つつがなく済んだんだ。それでいいじゃねえの。」
「よくないッ‼」
外とは打って変わって温かいラボの中。ミハエルはようやく、思う存分声をあげられる状況になった。
「さっきまでは死ぬかと思うほど寒いし、今になってみれば予想通り関節がめちゃめちゃ痛いし!理不尽だ!」
「嬢ちゃんよ、世の中ってのは理不尽なことばっかりだぜ?」
「論点をずらそうとするなッ‼」
バンッ!とコンソールをぶっ叩きそうになったミハエルだが、メモリーバンクの時のように変なものが出てくることを恐れ、かろうじて叩きたい衝動を抑えた。
だが、はけ口を失った怒りは、まだ彼女の中でメラメラと燃えている。このまま余計な熱を抱えていてもしょうがないことは、ミハエル自身にもよく分かっているのだが。しかも今は、アイに訊かなければならないことが山ほどある。なので、
「ふぅ…。」
もう、余計な熱は溜息とともに吐き出すことにした。これでもまだイライラするが、何もしないよりはずっと心が落ち着く。
どうにかクールダウンできたミハエルは、もう一度、アイに向き直った。
「まあ、そんなことはどうでもいいとして。…アイ、私をあの場から連れ去った理由がいまいち分かんないんだけど。教えてくれないか?」
ミハエルの、そのあまりの切り替えの早さに、アイは思わず噴き出した。若いけど、場面場面で切り替えができるところがミハエルの面白いところだと思う。…本人にそう言うつもりは、毛頭ないけど。
「いきなり仕事モードですか~?働き者だねえ。」
「さっさと話せ。」
ミハエルの反応は、にべもない。
「ん。まあ、お前を拾いに行ったのは成り行きからでしてぇ。」
そう言うなり、アイはキーボードを叩く。彼には慣れた動作のはずなのに、随分と危なっかしい叩き方だ。…何でだ?
「ミハエル、ホントの狙いはこちらだった訳さ。今ディスプレーに表示したこの女の子だ。誰だかわかるかな?」
「…黒服共に狙われていた女の子?」
アイの急な問いかけに、ミハエルはハッと現実に意識を戻した。とっさに自分の意見を言うと、アイは満足気に頷く。
「ビンゴ♪お前が消える前、俺はもう明日…つまり、今日の準備をしていた。あの子を自警団本部に連れて行って保護させたのさ。そうすればきっと、あの子を証拠に、あのグループは壊滅する。そう考えた訳。」
「そうか…。よかった。彼女は被害者だ。事が終わってもおびえ続ける羽目になるんじゃないかと、心配してたんだ。」
団長逮捕に挑む際、ミハエルはそれが気がかりになっていた。最初こそ、自分の目的のみを目標に据えて突き進んできたミハエルだが、あの女の子が黒服の大人に追われているという話を聞いた時、どうも放っておけないような気がしていたのだ。もしかしたら、自分が黒服共に捕まった時と、勝手に重ね合わせて考えていたのかもしれない。
そんなミハエルの心を見透かすように、アイはニヤニヤ笑う。
「自分のことで手いっぱいなお前がか?随分余裕ぶっこいてんじゃないの~?」
ムカつくが、言うことはいちいちごもっとも。ミハエルは、また怒りが再燃焼していくのを感じたが、ここでまた怒っても仕方がないのである。アイをキッと睨むだけに留め、話を元に戻した。
「本来の自警団員ってのはそういうもんなんだよ。…で、他には何が?」
「あの女の子を保護させたのち、俺はお前と共に、本部が派遣するであろう追手が来るまでに、団長をひそかに捕える。んで、後のことはお前に全部任せて、俺は引き上げようと思ってたんだよね~。」
「…そうだったのか。やっぱり何か考えてたんだ。」
「面倒なことはとっとと終わりにしたかったからなぁ。もっとも、誰かさんが途中でここを脱走することは、予想外だったがな。」
「うっ!」
それを言われると胸が痛む。だって、(今聞いたばっかだけど)やっぱりアイはキチンとプランを練って行動しようとしていたのだから。それを、理由はどうであれ、言いだしっぺである自分が滅茶苦茶にしてしまった。これを気にするなっていう方が無理がある。
「あれほど団長退治に張り切ってたお前がなぁ…。もしかして、というか確実に、侵入した部屋で何か見たんだろ。」
またしても図星なアイの発言だが、ミハエルは、この質問には動じなかった。なにせアイのことだ。一度自分のものにしたミハエルを逃がさないよう、ミハエルの動きを監視する何かを用意してあるということは、何となく予想できていた。
それよりも、この質問に何と答えるかが問題なのである。
あの部屋で見たものを本人に言っていいものかどうか、今でもよく分からない。しかし、
無断で部屋に侵入したり、ここを出て行って迷惑をかけたりなど、アイに黙って、散々迷惑をかけているのは確かなのだ。これ以上何かを隠したところで、果たしていいことなんてあるのだろうか?隠せば隠すほど、ろくなことにはなっていない筈なのに。
 だったら、もうここは素直に言ってしまった方がいいのではないか。…ミハエルはそう思った。そう思った途端、ゆっくりと自分の口が言葉を言っていく。
「…可哀想だと思ったんだ。小っちゃい頃のお前が。」
「ははあ。偶然ガキの頃の俺を見たのか。」
「そう。私も、軍や自警団に入って以来、自分の生き方の自由なんてなかった。だけど、訓練を積めば強くなる、戦う手段が分かる。そうすれば、自分の身だって守れるし、ゆくゆくは強くなった分、人生の選択肢が広がると思ってた。だから自由は無くても、辛いことなんてなかったんだ。でもお前は…お前自身はどう思っていたのかは知らないけど、少なくとも、子供時代のあの表情。凄く辛そうだった。それを知ってしまったから…私の一件で、また苦しめるのは嫌になったんだ。」
「…ハン。今更同情なんざいらねえのによ。逆に仕事増やしやがって。」
ミハエルの話を聞き終えたアイは、表情を変えることなくそう言うだけだった。表情から彼の感情が読み取れず、ミハエルは戸惑う。だが、このまま彼にかける言葉が見つからず、気まずいだけの長い沈黙になるのも嫌だった。思い切って、彼女の方から、おずおずと言葉をかけてみる。
「…私からも訊きたいんだけどさ。たかが実験台に、お前は私を助けた。助けに来てくれた。私の代わりなんて、他にも沢山いるだろうに。一体何で私を助けたんだ?…その理由があれば、聞きたいんだけど…。」
「ん~…。」
アイはそう言ったきり、黙りこくってしまった。
恐れていた沈黙の時間が訪れる。ミハエルは自分の返答と、問いかけた質問に後悔し始めた。その時だった。
「…なんとなく?」
ようやくアイが口を開いた。だがその答えは…あまりにも考えていた答えとはかけ離れており、尚且つ、かなり小ざっぱりしている。
おかげで、なんて反応したらいいかすら分からなくなった。
「…は?」
「だから、なんとなくだよ。それ以上でも以下でもねえ。」
「…お前って、結構単純なんだな。」
「悪いか?シンプル・イズ・ベスト。物事の道理はシンプルであればあるほど分かりやすいぜ。」
「何か…分かったような分からないような…。」
「意味なく喋ってるかんね。」
「おいっ!」
ミハエルはとうとう脱力した。こんな奴に気を使った自分がアホらしい。だけど、あのグショグショに泣いていた少年が、独立独歩の立派な、というか、ひとまず自分一人は養える大人なっていることは事実であるようだ。…やはりこいつ、ただ者じゃないんだろう。そう思うことにしておこう。
ミハエルはそう割り切ることに決めた。でなければ緊張したりグダグダになったりというこいつのアップダウンに、ついていけそうもない。っていうか、うっかりすればこいつのような人間になってしまいそうだった。まだ若い彼女にとって、それだけは御免だった。
「…おっ?何か自警団に新しい動きがあったようだぜ?」
話も一通り済んだ良いタイミングで、何かアイが情報を掴んだようだった。先ほどの危うげな叩き方で操作し、ディスプレーに何かを呼び出す。
「動画だな。さっき自警団周辺に設置したカメラが、団長逮捕の瞬間を捉えたようだぜ。ホレ。自分で見てみろよ。」
そう言い、アイは椅子をずらし、ミハエルがディスプレーを見やすいように場所を空けた。促されるまま、ミハエルはディスプレーの前に進み出てみる。
成る程。確かに団長含む、先程までミハエルを窮地に陥れていた面々が、今では大人しくお縄になっている。特に団長の表情は傑作だった。アイから二、三分で追手が来ると言われていたのに一時間近くも待たされた。にもかかわらず、今の今まで自警団に残っていたのは、アイが行った破壊行為に肝を潰したからだろう。それを裏付けるように、団長の顔は赤くてくしゃくしゃに歪んだ…簡単に言えば、現代で言うところの梅干を彷彿させるような、かなり面白い顔になってしまっているのだ。
「これで、満足か?」
満足気にディスプレーを見るミハエルに、アイは問いかけた。ミハエルは嬉しさを湛えた表情で、アイに頷く。
「ああ。まずは一段落だな。」
「…一段落?」
アイは、思わず聞き返した。
「そうだ。これから友人を探しに行くんだからな。」
「あぁ⁉諦めたわけじゃなかったのかよ⁉ほぼ捨て身で飛び出したから、てっきりもういいのかと思ってたぜ!」
「あれは、さっき言った理由のためだ。生きて帰れたら、その足で探しに行くつもりだった。」
「ふうん…。ま、いいけどよ。長丁場になりそうだし、それは一人でやってくれ。自警団本部から貰った、こいつをやるからよ。」
そう言って、アイはポケットから何かを取り出した。そこには「軍部第二演習場」という文字がでかでかと書かれ、下には住所と地図が描かれている。
「…これがどうした?軍部といえば、自警団を含む軍事機関の大元じゃないか。私には殆ど関わりは無いところだと思うけど…。」
「今まではな。だが、こっちの紙を見れば、そうは思えなくなる筈だ。」
「?」
アイから、もう一枚の紙を手渡されたミハエル。それはどうも軍部第二演習場にいる人物の写真つき名簿らしいのだが、見てもいまいち、それが自分と何の関係があるのか分からない…筈だった。
「…アイ!どうしてここに、私の友人の名前があるんだ⁉」
「驚いただろうが。自警団に、あること無いこと言って、黒服共に攫われたと思しき奴らのリストを見せてもらったのさ。すると、お前の言ってたダチの名前があって、今はここにいるってことが分かったんだ(この小説では未公表だけどナ♪)。」
「そんなことまでしてくれたのか…そっちのほうのが驚きだ。」
「あっそ。毒を食らわば皿まで、が、俺の信条なんでね。一応、軍部第二演習場の詳しい場所は、自警団本部に行けばわかるから。」
「ああ、あいつの居場所が分かったんだ。それくらいは、自分でやるさ。」
そう言ってしまってから、気が付いた。この一件が終わった、ということは…
「なあ…ひょっとしてアイは、まだ私のことを実験台にしたかったりする?」
「されたいのか?」
「されたくはないけど、大見得切っちゃったからどうしようっていうのが、今の本心。」
「あそ。だったらいいわ。お前の言った通り、実験台の代わりなんて、他にも沢山いるしな。」
「えっ⁉」
意外だった。ここまでミハエルに付き合っておいて、今更何もいらないと?あれ程働かせたのに何も見返りはいらないなんて…何か逆に恐ろしい。
ミハエルがそう思った時だった。アイが大げさともいえる程げんなりした顔を見せ、溜息をついた。
「だってさあ、お前といると、何故か色々面倒事に巻き込まれるんだもん。このまま俺のものにしていたって、どうせろくなことは起こすまい。だったらいっそのこと、出て行ってもらった方が楽だろうさ。」
アイの話を聞いて、ミハエルはようやく納得した。つまりアレか。お前は邪魔だから出て行けと。そういう話か。
それを聞いたら、もうここにいる必要はないという訳だ。一刻も早く、ミハエルは軍部第二演習場にいきたくなった。…何故か名残惜しさを感じているが。
「じゃあ、お別れなんだな。」
一応、別れの挨拶らしいことはしておきたかった。だがアイは、ミハエルの言葉に対し、「そんな大げさな」とでも言いたげな顔をして、例のニヤニヤ笑いを浮かべる。
「そんなこたねえだろ。最近都市部では、俺と同じ技術の開発が始まってる。軍部に技術提供を求められるのも、時間の問題だ。意外と俺は、有名人らしいからな。」
その話に、ミハエルはびっくりした。かつては自分も都市部に住んで居たのだが、そんなことは聞いたこともなかった。最近そういう風潮になったのかもしれないし、もしかしたら、まだ一般人には出回っていない情報なのかもしれない。第一、アイの存在がこの田舎以外でも有名になっていることも驚きだ。
でも、そういうことならば。
「また会えるかもなんだ?軍部で。」
「そういうことだクソガキ。分かったんならとっとと行けよ。俺はこれから忙しくなる。休めるのは今のうちなんだからよ。」
「分かったよ…。じゃ、また会えたら。」
「んん。」
今度こそ、本当にお別れである。
ミハエルはもう名残惜しさも感じずに、清々しい気持ちで、アイのラボから出て行った。
もうすぐで友人に会える。そう思うだけで、今の彼女の心は満たされていくのである。

(完)

「魔人記 おまけ」

「…やれやれ。やっと大仕事が終わったか。」
ミハエルがラボ内にいなくなったことを確認し、アイはグーンと伸びをした。十分に伸びをし、リラックスした彼は、おもむろに自分の目に透明な板を当てる。この板は、今でいうCTスキャナのようなものであり、これにより、彼の体に異常があるかどうかが分かるのだ。
つまり、これを目に当てているということは、目に何か違和感があるということを示している。
「しかしあれだな。時間が経っても視界はぼやけ、しかも像がぶれているのが治らないようでは、俺の目はもうまともではあるまい。こりゃあ完全にいかれちまってる。」
そう言って、彼はまた溜息を洩らした。ミハエルの時のような、他者を馬鹿にするような溜息ではない。もっと深刻な、悲嘆の色に染まった溜息である。
実は、オオトリに乗る前から、アイの目は異常をきたしていた。ラボに帰り着くに時間がかかったのも、そのためである。
その原因も、彼には大体分かっていた。そして、CTスキャナのようなものが表示した結果も、彼の予想と大体あっていた。
「…やっぱりあれかな。大型艇の起動スイッチに触れた瞬間に出た火花。アレが目の中に入っちまったのが悪かったんだな。失明しなかっただけいいけど、こりゃもう特注のメガネがいるわな。きっと。」
彼がそう言った瞬間だった。

チーンッ!

まるで電子レンジのような音が、ラボ内に響き渡る。いや、実際その音を出した物体は、電子レンジのような形をしていた。実はこの物体は、先程アイがセッティングしたものだ。アイの目に異常がある場合、CTスキャナのようなもののデータがこの機械に送られる。そして、今の彼の視力に丁度合う、厚さ、度、デザイン共に完璧なメガネを瞬時に作ってくれるのだ。ちなみに、電子レンジのような形をしている理由は「なんとなくそんな形にしてみたかったから」である。それ以外には、理由らしい理由はない。
「できたか。今時のメガネなんて、かっこいいデザインが多いんだ。いくら視力が悪かろうと、少しはマシなデザインになってんだろう。」
そう言いつつ、アイは電子レンジのような機械に手を突っ込み、早速メガネをかけてみる。普段は自分の容姿には気を配らない彼だが、これからは人に会う機会も多くなりそうだった。それなのに、へんなメガネを出されて、笑いものにされてはかなわない…そう思っていた。そして、恐る恐る手直にある鏡を手に取り、覗き込んでみたら…

「…今どき瓶底メガネって、お前…」

絶句した。っていうか、不覚にも自分の顔を見て笑ってしまった。
しかし、彼が創り出したシステムには、殆ど間違いはない。ということは、今の彼の目に合ったメガネはこれ以外にはありえない、ということなのである。自分が作ったシステムがそういう答えなら、それが正解なのだ。…たとえ漫画に出てくるような、変人風のメガネを作られたとしても。
「…まあ、慣れりゃ面白えか。」
アイは直ぐに持ち直した。元々研究にしか興味のない男なのである。再び自分の研究に集中できれば、それでよかったのだ。
彼は何事もなかったかのように、再びディスプレーに現れる様々なデータに目を通し、嬉々として作業を開始した。

もはや内面だけでなく容姿まで変人と化したアイが、再びミハエルに会う日は意外と近かったりするのであるが…それはまた別な話のことである。

(今度こそ「完」!)

              ◆

こんにちは(或いはこんばんは)!
奥貫阿Qです。

今回も長文失礼しました(苦笑)
長文ではありましたが、「魔人記」最終話、そして「魔人記」という物語自体、いかがでしたでしょうか?

中編くらいの長さの物語ではありましたが、実は最初にも言った通り、改変版「Moon King」にも大きく関わってくる話となりますよ~!
そちらの方に、名前すら出てこなかったミハエルの友人も(恐らく、今度はレギュラーで)登場する予定ですので、掲載時には、よろしければまた見に来て下さい!
もちろん、この小説だけでも、一つの物語となっていますので、この作品だけでも楽しんで頂ければ幸いです♪

ちなみに、来週は改変版とコンクール(性懲りもなくまた出品しますだ)作品の世界観を固める為に、改変版の「Moon King」の簡単な設定を掲載し、再来週には試しに一話だけ、改変版仕様の「Moon King」を掲載してみます!

初期とはほぼ別作品ってなぐらいに変わり果ててしまいましたが、もしよろしければ見に来て下さい!

「魔人記」をご愛読して頂き、ありがとうございます!
また次回作でも、会えることを願っております!
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ti2958.blog.fc2.com/tb.php/94-925c9b8e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

プロフィール

奥貫阿Q

Author:奥貫阿Q
ツイッターで小説更新の宣伝、写真等の掲載も行っております。
(「奥貫阿Q」という名前でやっています。)

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (28)
日記 (0)
小説 (80)
小説設定 「Moon King」 (2)
「Moon King」改変後 (109)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR