2017-09

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「Moon King」お試し掲載(その①)

皆さんこんにちは(或いはこんばんは)!
奥貫阿Qです。

ブログの長期のお休み(一ヶ月ほど)に入る前というわけで、早速載せます!「Moon King」の改変版!
今回は、一日に二度更新し、最初は「その①」、次が「その②」という、二話掲載の方式で話を載せてみました。

PCのバッテリーがヤバいことになったり(←未解決っすわw)、書くペースが遅かったり等、困難はありましたが、どうにかこうにか書き上がったので、是非見てください(笑)

それでは、短い挨拶ですが、そろそろ今週の話に入ろうと思います。

では!
また一か月後にお会いしましょう~!


          ◆

「Moon King~新薬開発の心得~」
(by ミハエル)

「新薬の開発ぅ?」
某国某所の工場の中。素っ頓狂なキリの声が、部屋中に響き渡った。
「そう。新薬。花粉症による鼻水ならばこれ一錠を飲めば直ぐに止まる。直ぐったって、何分後、とか野暮なことは言わないぜ?言葉通り『飲めばすぐに止まる』スグレモノさ。」
キリの声に続いて聞こえてくるのは、アイの声だ。登場して早々、二行にも亘る説明をするのには、ちゃんと訳がある。
実は、先程先陣切ってセリフを言ったキリが、重度の花粉症になってしまったからだ。
重度の、というだけあって、それはそれは酷い症状なのだという。昼間はくしゃみを連発し、それが工場―アヤトの代になってからは「修理屋」と改名した工場―に、めいっぱい響く。夜は鼻づまりのせいか、鼾がうるさい。同じ屋根の下に住むアヤトはとうとう我慢できなくなり、先日、アイに「花粉症を一発で治す薬を作ってくれ!」と泣きついたのだ。
で、その薬が今日できたらしい。
できたらしいのだが。
「キリ。何で私まで呼ばれなきゃなんないんだ?こいつと絡むとろくなことがないのに。前の自警団にいた時もそうだったし。」
「まあまあ、グスッ。ミーナ。一応アイのストッパーたる…へぶしっ!君がいなきゃあ、不安だしっくしゅんっ!」
…この、酷く読みにくいセリフを話す人物もまた、キリその人である。花粉症のせいでかなりアホみたいなセリフになってしまっているが、花粉症であろうとなかろうとアホみたいなセリフを話すので、何ら問題はない。
問題があるのはむしろ、そのくしゃみをする時の声の大きさだ。確かにこれはうるさい。声は鼻声で元気がないのに、くしゃみだけは元気いっぱいなのだ。元気すぎるくしゃみのせいで、時々コップの中のお茶まで震える。
「ヒギィ…グスッ。アイ、こんな酷い症状でも、何とか、くしゅんっ!なるかなあ?私もう、夜も満足に、ベシッ!眠れないんだ。」
…いちいちセリフが読みづらい。もうこうなったら、くしゃみのところだけ()で囲うか。
「(べくしゅっ!)ねえねえアイ(ハクショイっ!)聞いてんの(っくしょんっ!)?」
「うーん。囲ったら囲ったで、微妙な仕上がりだなあ。」
「ミーナ(ぐしゅっ)何言ってるの?」
思わず口に出した私の言葉に、キリを困惑させてしまった。
「何でもない。…アイ、キリの質問に答えてやってくれ。」
「あいよ。」
そう言うなり、アイは私達の目の前に、錠剤がぎっしり入ったビーカーを置く。その錠剤は、薬局とかに普通においてありそうな形をしているけど…何だろ。ヘドロみたいな色が気持ち悪い。
「これが、俺が作った薬だ。キリさんの症状を見る限り、十二分に効果はあるだろうさ。早速試す?」
「試したいっ!」
「ふーん、そう…」
くしゃみを我慢して声を発したのだろうか。妙に鼻声がかったデカい声で、キリが返事をした。その声を聞くなり、アイがニヤニヤと…かつての自警団員時代に見かけた、怪しげな笑みを浮かべた。当時はかけていなかった変人風メガネをかけているせいで、余計不気味だ。
すっげー嫌な予感がする。
「じゃ、召し上がれ!」
アイがそう言い放った直後、事は起きた。一体いつから隠し持っていたのか、あのヘドロ色の錠剤を手に持ち、コイントスの要領で、口に向かって発射したのだ。
キリにではない。殆どこの一件とは無関係の私の口に、である。
「ッ!」
私は口を固く結び、ベシッ!と手の甲で錠剤をはじいた。これでも機動隊に入っていたことがあるのだ。機動力と動体視力には自信がある。
「どうだ!かわしてやったぞ!」
自信満々にそう宣言する私。だがアイは、未だに笑っている。
何でだ?と思ったその瞬間。

スポッ!

変な音が右側から…そう、りょうど私の真横、廊下あたりから聞こえてきた。
続いて、

ゴックン。

明らかに…明らかに何者かが何かを飲み込んだ音がした。
私は、とりあえずここにいる人物に視線を投げてみる。患者であるキリはキョトンとしたままだし、アイはニヤニヤしたまま首を横に振った。
分からない。誰が薬を飲みこんだんだ?
私が首を傾げると、廊下から、若い男の叫び声が聞こえてきた。
「ミカー!何か僕の口に飛んできたんだけどー!」
「ええっ!?アヤト!?」
どうやらあの薬はここにいる人物にではなく、たまたまここを通りかかったアヤト(彼は私のことを「ミカ」と呼ぶ)の口の中に入ってしまったようだ。
なんというバッドタイミング…。
「と、とにかく吐いて!吐け!」
「分かった!」
「バカ!誰がここで吐けって言った!?トイレで吐き出せ!」
「あ、そうか!」
「あ、そうか!」じゃねえよ。
よっぽど気が動転していたせいか、アヤトは奇行の末に、自分が何をするべきか悟ったらしい。大急ぎでトイレに駆け込む。
「(べくしゅん!)アヤト、大丈夫かなあ(ぶしゅんっ)…。」
アヤトがバタバタと廊下を駆けていった後、自分の仲間を心配するキリ。その横で、
「あー、面白え♪」
気付けばアイは、うっすらと目に涙を浮かべ、一人笑いを堪えていた。
腹立たしい!
「お前!何で私の方に錠剤を投げた!?」
「だって、まだ動物実験済ませてねーんだもん。アヤトの野郎が開発を急がせるからさぁ。」
「私は動物じゃないッ!」
アイのあまりに飄々とした態度に、カチンときた。奴の胸ぐらを掴みあげ、私は机の上にあるビーカーに手を突っ込んだ。
「あっ!何すんだよ!?」
「決まってんだろ。お前を使って、今ここで人体に影響がないかどうかを調べる。それでいいだろ。」
「人権侵害反対!」
「お前が言うな!」
私は錠剤の一つ(「人権侵害反対!」とまで言われりゃ、そりゃ気を使う)をアイの口にポイッと放ると、勢いよくお茶を流し込む。
「もががぁーーーーっ!」
暴れ狂うアイ。だがコイツは私と違い、殆ど体を動かさない男だ。力技で私にかなうはずもなく、

ゴッ…クン。

飲んだ。
製造者があれ程飲むのを嫌がった薬だ。果たしてどんな効果が出ることやら…。
今更ながら、私がアヤトとアイの身を案じ始めた時だった。
「やっぱり(へきしゅっ!)、薬局で薬(じゅんっ!)買うことにすっかな。あの薬(へぎっ!)なんかやばそうじゃん。」
キリがそんなことを言い出した。そりゃそうだろう。私も、その考えには全面的に賛成だ。
相変わらず花をグズグズいわせるキリだけど、あの妙な薬を飲まされるよりかは、ずっといいだろうさ。
「キリ。とりあえずこいつ、とっちめといたぞ。この件も、もう大丈夫なはずだ。」
「だね(べしゅっ!)。万事解決(ぐしゅっ)。あとは私の鼻水が止まりすればっ…へっへきしーーーーーんッ!!」
何故かさっきからのびたままでピクリとも動かないアイは無視して、キリは薬局へと向かう。
何も起こらないし、とりあえずこの件は、今のキリのくしゃみと共に終わりを告げたんだろうな、と、私は思った。
次の日、今日よりも恐ろしいことが起こることも知らずに。

                  ◆

「いやぁ、この国の薬は凄いなぁ!用法用量を守って正しくお使いになったら、早くも効き目が出たよ!」
あの謎の鼻炎薬騒動から一夜が明け、私はキリとアヤトの安否が気になり、再び工場…ではなく。修理屋に顔を出した。私を出迎えたのは、なんと、昨日あれ程鼻をぐしゅぐしゅいわせていたキリだった。昨日は話すのも辛そうだった彼女が、今はマスクすらもせずに、元気そうに話をしている。きっといい薬が見つかったのだろう。
でも。
「それほどこの国では花粉症患者が多いってことだろ。毎年こんなことで悩む羽目になるなんて、私は嫌だ。」
「そんなこと言わずにさ~。素直に驚かないわけ?この素早い効果にさ!」
「いや、薬の効果には驚いてるよ。驚いてるけど、あんま喜べない。」
「素直じゃないなぁ!」
いちいち反応がウザい…。だけど、こんな調子のキリこそが、いつものキリだ。どうやら薬のおかげで、見事完全復活したらしい。
取り敢えずは、一安心か。
花粉症からの解放に嬉しくてはしゃぎまくるキリを横目に、私はそっと溜息をついた。
すると、トントン、と、軽いノックの音が聞こえてきた。来客だ。
まだ開店時間前なのに、誰が来たんだろう。
「はーい!悪いけど、勝手に入ってくんない?先客がいるんだ~。」
「キリ!せめてドアスコープから客が誰か見てから中に入れてよ!不審者だったら危ないだろ!」
私がそう制止しても、もう遅い。ここの住人が「入れ」と言ってしまったのだ。来訪者は何者であろうと入ってきてしまう。
とにかく。不審者だったらまずいので、私はキリに「絶対そこ動くなよ!」とキツく言って、恐る恐る修理屋の出入り口へと向かう。
果たしてやってきた客とは?
「ちわーっす。回診に来やしたぁ。」
「ああっ!アイ!今度は何しにきやがった!」
何と、昨日あれだけ騒いだ鼻炎薬の製作者である、アイだった。あの怪しげな薬品の効果は出なかったのか、普通に元気そうだ。
「『きやがった』とは失礼な。今日はちゃんと、医者としての用事で来たっつうのに。」
お前…ここにあんなキモい薬持ってきて、よくそんなことが言えるな。昨日の今日じゃんよ。
これはもう、ろくな用事ではあるまい。そう思う。
「医者ぁ?あいにく、キリはもう全快したんだ。つまり、お前の出る幕はないの。分かったらとっとと帰れ。今すぐ帰れ。」
私はもう、こいつをさっさと追い返すことに決めた。
犬の子を追っ払う時のように、手をパタパタさせる…あれかな。漫画とかのシーンでよくある、「シッシッ」とか言いながらやる、あのポーズ。あれをやって、「マジで帰ってほしい」ことをアピールした。
だが、そんなことをされたというのに、あいつの顔は嫌悪感すらあらわにしない。
というよりも、いつもより真顔だ。
こんな顔をされちゃあ気味が悪い。私はもう、追っ払うことよりも、彼が何でそんな顔をしているのかが気になってきた。
取り敢えず、話だけでも聞いとくべきかな…。そう思って、声を掛けてみた。
「…どうしたの?」
「別にどうしようもない。ただ、今から急患が出るだけだ。つか、出るはずだ。」
「急患が出る…はず?」
「そ。だからわざわざ、俺の方から出向いてきたわけよ。」
アイがそう言い終わるか終らないか、って時だ。
「ぎゃああああああああッ!」
修理屋の奥の方、居住部の方から、キリの悲鳴が聞こえた。
「えっ!?何だ!?」
キリの悲鳴に、一瞬ぎょっとする。だが、彼女の悲鳴は今のだけでは終わらなかった。
「助けて!誰か来てえええええッ!!」
「おお、始まってるのか!」
まるでスポーツ中継を楽しみにしてたオヤジみたいな口調で、アイは居住部へと走って向かう。
さっきの真顔はどこへやら。アイは、何か妙に嬉しそうな表情であることを、私は見てしまった。あれは明らかに、マトモな医者の表情ではない。
このシチュエーションと、今のアイの表情…。
このまま放っておいたらマズイことになる!多分!
「待て!私も行く!」
私も大急ぎで、アイの後を追う。
ドタドタドタッ!と、私達二人の足音が廊下に響く。昨日アヤトが災難に遭った、あの廊下だ。その廊下の向こうに部屋があるから、悲鳴はここから聞こえたんだ。
「医者が参りましたァ!」
「キリ!一体どうしたの!?」
私とアイは、ほぼ同時に部屋の中に入った。
そこには、
「わあああああああッ!」
「ああ、こりゃ酷い…。」
私が悲鳴を上げ、アイは、げんなりとした声のトーン(さっきの元気はどこ行った?)になる有様があった。
ヘナヘナと脱力して床に座り込んでいるキリは、この際どうでもいい。
でも、彼女の視線の先にあるものは、気にせずにはいられない。
それは流木のような色、質感の物体で、部屋の真ん中にゴロンと転がっている。しかもこの物体、まるで人のような形や大きさをしていて、ご丁寧に布団までかけられているのだ。
これってもしかして…。
「…ミイラ?」
「いや。これはミイラのなりかけだ。かろうじてまだ生きている。」
私の質問に、アイは首を横に振って、そう答えた。
やはり研究のかたわら、副業で医者をやれるだけのことはある。こんな有様を見ても動じてないのはアイだけだ。
「どこの誰だよ、こんなもんを家の中に置いたのは。」
「いいや。これはもともとこの部屋にあったのさ。…なあ、キリさんよ。」
アイの問いに、キリはコクコクと首を縦に振る。
「そう。そうなんだよ。この部屋にはもともとアヤトが寝ていたの。異様に頭が痛いとか言ってたから昨日からずっと寝てたんだけど…。でも、今アヤトの様子を見に来たら、アヤトの代わりに、こんな干物が…。」
仏(のなりかけ)を「干物」とは失礼な…とは思うものの、キリも多分動揺してるんだ。これはいさめないでおくのが優しさだろう。
「で、で、アヤトの姿はどこにも見えないままなんだよ…。ねえ、ミーナ、アイ。これ、一体どうなってんの?あ、言っとくけど、私は犯人じゃないからね?」
「大事な仲間がいなくなったというのに、ポロッと自分の保身になるようなこと言いやがって…。」
思わずボソッと文句が出てきてしまう。
だけど、キリを疑うかどうかは、状況をよく見てからというものだ。
私はアイの方を向き、彼の考えを聞く。あんまり認めたくはないけれど、彼の方が私よりも数段頭が切れる。こんな時は、私よりもむしろ、彼の方が適任だ。
「…どう思う?」
「どう思うったって…。これ、考える程の事でもないぜ?」
…え?
それって、どういう意味だ。
「…というと?」
「分からねえか。…ま、無理もないか。」
じゃ、分かるように言ってやる。…そう言うとアイは、私とキリを、部屋がよく見える位置に立たせた。そして、自分は私達の後ろに立ち、室内を指差した。
「俺の考えが正しければ、アヤトの奴、この部屋にまだいるもん。それと同時に、このミイラの謎は解けるぜ?」
「「…はいィ!?」」
ビックリした。ビックリし過ぎて、キリと声がハモってしまった。
「アヤトがここにいるだって?この部屋には、収納スペースも窓もないのに?」
「うん。全ては昨日、俺が作った薬のせいだ。あの薬、『飲んですぐに』鼻水を止めることができるって言ったろ?あの即効性を生みだす成分がまずかった。」
「?…どういうこと?」
いささか雲行きが怪しくなってきた気がしたので、私は確認の気持ちも込めて、アイに説明の続きをするよう促した。
「その成分、本来配合する筈の量よりも、かなり多めに薬に含まれていることが分かったんだ。その量を超えちまうと、体の水分を極限まで奪う劇薬になっちまう。」
「ふーん…で?」
やや声のトーンを落として、更に続きを促してみる。
「あの薬を飲んだのは、俺とアヤトだけだ。だが、この部屋に今までずっといたのはアヤトただ一人だろ?」
「うん。」
「だね。」
私とキリは頷く。
「てことは、この部屋で劇薬の効果が出るのはアヤトのみ。つまり、ここに転がってる干物はアヤトってことになる。以上だ。」
「…はあ。」
「成る程…。」
…ん?でもこれって…
「ちょっと待てぇええッ!」
あまりにもぶっ飛んだ現実に、一瞬フリーズしかかっていた頭が動き出した。
それと同時に、一気に喉が熱くなる。自分が何か叫んでるってことに気付くまで、更に数秒かかった。
「何なんだよそれ!結局お前が犯人じゃん!名探偵気取るどころか、立派な殺人犯じゃん!!」
「未遂だ。未遂。まだこいつは生きてる。」
「のんきなこと言ってんじゃねーよ!」
「そうだ!まさか仲間の手にかかって死ぬ子が出るなんて…。この鬼!悪魔!恩知ら
ず!今までやった給料全額返しやがれッ!」
私がシャウトしたおかげか、キリもシャンとした顔に戻っている。鬼だの悪魔だの好き勝手言ってるが、好き勝手言われるだけのことを、アイはしでかしたのだ。
「うわああああん!アヤトごめんよおお!こいつのせいで葬式代すらも出せそうにないいいい!」
「給料全額返せって、こいつの葬式代を確保するのためかよ…。ってか、そんなに家計ピンチなの?」
流石に自分のしでかしたことを気にし始めたのか、アイがキリにそんなことを訊いている。
確かに葬式代って高いって聞くけど、ここの修理屋はそれほどヤバいのだろうか。
「あったりまえじゃん!うちは客もろくに来ないような、ド貧乏な修理屋なんですよ!必要な日用品すべて百均で済ますくらいピンチなんすよ!まあ、こないだ私が、2000年前のアニメ(シリーズもの)の復刻版DVDを複数、衝動買いしたせいってのもあるけど!」
「じゃ、あんたがピンチな家計にトドメさしたんだろ…。」
ホントだよ。
何が「あったりまえじゃん!」だよ。要するにお前の無計画さが悪いだけだろうが。
アヤトも、こんなちゃらんぽらんな女雇ったせいで、気の毒に…。
「うわーーーーーん!とにかくアヤト、気の毒にいぃ!この若さで…この若さで…!」
心から死にゆくアヤトを悼んでいるのか、はたまた自分の失態を誤魔化すためか。キリはさっき以上にわんわん泣き、もはや干物となったアヤトにすがりつく。
すると。

ピクン…。

「…キリ?何かアヤト、今動いたっぽいんだけど…?」
「わーーーーん!」
聞いちゃいねえ。
するとまた。

ピクッ、ピクッ…。

「ほ、ほら!やっぱ動いてる!」
「んなアホな。こいつはもう、ほとんど水分が残ってない状態なんだぜ?」
アイは私の意見を否定する。
「だけど、私は現に今さっきアヤトが動いたのを…」
私が言葉を続けようとした、その時だ。

ガシッ!

「「「!!」」」
 アヤトが…動かない筈のアヤトが、キリの二の腕を掴んでる…。
 それに気付いた時、アヤトの口から、微かに漏れる息の音があることに気が付いた。
 何か、言おうとしてる…?

 「キリ…さ…。勝手に…殺さ…な…」

 !!!!!!!

 「「「…うわあああああああッ!」」」

 ―某日。某修理屋内は、男女四人の悲鳴が響き渡ることとなった。

                   ◆

 「ミーナ。私、あの時死ぬほど驚いたよ…。」
 「私もだよ。あんなホラーじみた展開、二度と御免だ。」

 全てのことが終わった数日後。私とキリは、自警団の集会に行く道すがら、もはや過去の笑い話となりつつある話をしていた。季節はもう春になったとはいえ、空気は冷たいままだ。
 「あの後、アヤトも何とか元気になって、本当によかったよ~。」
 「それは不幸中の幸いというか…。でも、あれだね。アイにあの薬の効果が出ない理由を聞いた時は腹が立ったなぁ。まさか自分だけ、あの薬の効果を消す薬を飲んでいたなんて。」
そうなのだ。アイが事前にそんな薬を服用していただなんて、いくら何でも用意周到過ぎる。となればあの一件、絶対あいつが仕組んだものだと、今でも思うんだよな。
 「その話はもういいよ。もう思い出したくないから…。」
 そう言うのは、あの劇薬騒動で一番の被害を受けたアヤトだ。まだ顔色が優れないものの、アイが事前に飲んでいた、あの劇薬の効果を消す薬のおかげで、こうして今ここにいる。
 ただ、あの一件以来、干物や乾物といった、いわゆる「乾きもの」が大の苦手になったらしいということを、キリから聞いている。…どうやら、完全に彼のトラウマになってしまったらしい。
 「ああ、ごめん、アヤト。…でも、いくらか『アレ』で、気は晴れたかな?」
 「晴れた、というか、『アレ』は『アレ』で恐ろしかったよ…。」
 「『アレ』?『アレ』ってなに?」
 キリが質問をしてきた。
 そうだった。彼女にはまだ、「アレ」のことを話していなかったっけ。
 「キリ。今この場に、アイの姿がないのはおかしいと思わない?」
 「?…ああ、そう言えばいないね。今日は休み?」
 「うん。だってあいつは今…」
 そう。私がやった「アレ」とは。

 「アヤトの代わりに、干物になっているんじゃないかな?」
「…え?」
「運よく生きのびてりゃいいなあ。アイの奴。」
「ええええっ!?」

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